雨中のNHKマイルカップ。
各馬に騎乗している騎手は何枚にも重ねたゴーグルを既に装着し、表情を隠してレースに備える。
大雨ではないが、既にターフは午前中から降り続けた雨によって悪化している状況なので、経験が少ない3歳馬には厳しいレース。
こうなっては如何に騎手が位置取りを判断し、内から行くか外から回して行くかに掛かっている。
騎手は直前に騎乗していたレースや映像を思い返して、馬場のどの位置を取るか争わなければならないので、その為にゴーグルで表情を隠している。
内ラチは多数の馬が通っていた為荒れている状況で、逆に外ラチは走った馬が少ないので芝のダメージが殆ど無い。
とはいえ、安易に大外に持ち出して距離ロス当然な戦法で勝てる訳もなく、東京の直線コースが長いとはいえ、大外一気は厳しいのだから。
そして、スターターが赤旗を振るうと同時に、ファンファーレの生演奏が行われ、観客は雨中にも関わらずそれに負けない様な手拍子を響かせる。
その間に各馬はゲートに入って、騎手は一瞬のスタートを備える為に騎手は宥める事や、首筋を叩いて落ち着かせている。
フォックステイルは2枠3番と馬場が荒れている内ラチ寄りと如何に泥を被っても入れ込まない様にするかが、鍵だった。
そして、最後に大外――8枠18番の馬――祐一の騎乗馬がゲートに入るとスタートは切られる。
「さあ、春の3歳マイル決定戦、今スタートが切られました」
向こう正面からのスタートなので、歓声や絶叫を聞いて出遅れた馬は1頭もおらず、各馬が平均したスタートとなった。
逃げの手を打ったのはマイネルフォーグとオースミダイドウだったが、泥を被るのが嫌がるかの様にフォックステイルが強引に先頭を奪う。
2頭は追う事もせずに、ペースが速くなると踏んだからか控えて、フォックステイルが単独で逃げの態勢に。
G�欺薺馨茲箸覆訖振廚�舞い上がっている様に思われたのか、控えている騎手が多く、後ろの方は固まっている状況。
フォックステイルは2番手におよそ、2馬身程の差を付けた辺りで無理に逃げることなく淡々とペースを刻む。
ローレルゲレイロは7番手辺りと申し分がない位置取りで、仕掛けのタイミングを計る様にキープしている。
これより後ろに下がると囲まれる可能性が高く、前に行きすぎると行き脚が鈍る可能性があるのだから。
2着の回数が非常に多い馬なので、後は如何に騎手が抜けるタイミングを間違えない様にするだけ。
だが、他の騎手はそれを承知して、ピッタリとマークする訳ではないが目標として定めている事だろう。
そんな中でポツンと最後方に待機しているのは祐一が騎乗しているエリシオ産駒で、追いつけていない様な走りだった。
最低人気の為、注目は一切されておらず、淡々と走っている様にしか見えない。
大外から内ラチ沿いを走れる様になったので、距離ロスは殆ど無くなったのは確かだが、逆に跳ねてくる泥で既に真っ黒に汚れている。
そして、600mを過ぎた辺りで後方に固まっている馬群は徐々にペースが遅い事が苛立ってきたのか、騎手と喧嘩をし始めそうな雰囲気。
その為、徐々に進出する馬もいれば、このまま騎手と喧嘩したまま後方待機を強いられている馬も。
「600mの通過タイムは34.2秒です。各馬、ここからどう盛り返すのか?!」
トップは相変わらず、フォックステイルだが、3コーナー直前なので徐々にマイネルレーニアとオースミダイドウが差を詰めてきた。
馬場の中央付近からはローレルゲレイロが進出し、内ラチから凡そ10頭分外に持ち出した為、容易に先頭集団に取り付けられる。
尚且つ、内に比べると芝はそれ程荒れていないので、ベストな位置取りだろう。
「さぁ、残り525mの直線のみ。先頭で駆け抜けるのはどの馬だ!!」
ここでフォックステイルは一旦、オースミダイドウに並ばれるが、まだまだ脚を残しており、余裕で食らい付いている。
左右から囲まれている状況だが、ここで下げるとこの後は失速するしか無いので、未だに鞭を振るわずに手綱をグイグイと扱く真琴。
残り300m。
外からはローレルゲレイロが脚を伸ばして、中団で控えていた馬と一緒に先頭集団を捉えようとする。
勢いは先頭集団を完全に上回り抜き去ってしまうと思われたが、フォックステイルが脅威の粘りで未だに先頭をキープ。
外からシベリアンバードが並びかけるが、真琴が大きく振るう風車鞭に反応し気を吐かずに抜き去られない。
そして、ローレルゲレイロとムラマサノヨートーが外からシベリアンバードに馬体を併せる。
ローレルゲレイロがフォックステイルを僅か――頭差を抜き去り、ゴールと思いきや、外から急激に脚を伸ばした2頭が迫る。
その2頭は低人気――16番人気のピンクカメオと18番人気のエリシオ産駒だった。
芝が荒れていない箇所を走ってきた2頭の勢いはローレルゲレイロを完全に一刀両断し、お互いに頭の上げ下げでゴールしてしまう。
共に雨中で芝状況が荒れているからこその奇策で、今回は運良く嵌ったに過ぎないが、芝状況が違えばまた結果は違っていただろう。
電光掲示板には1着と2着は写真判定のまま、3着10番、4着3番と表示され、僅か頭差でフォックステイルは4着に敗れてしまった。
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この話で出た簡潔競馬用語
特に無し。