桜花賞。

     阪神競馬場で開催される牝馬クラシックの1冠目であり、距離1600mとイギリス1000ギニーを模範としたレースとなっている。

     そのため、優駿牝馬――オークスの2400mよりも800m短いという事は多くの馬にチャンスが。

     ただ、チャンスといってもある程度は付いていけるスピードが無いと勝負にはならず、牝馬向けの距離とはいえ過酷なのは変わりない。

     一般戦と違い、経験と多数の観客に晒される中で駆けるので、消耗は一般戦の比ではない。

     そのプレッシャーを跳ね返してこそ、一生の内に一度しか出走出来ないクラシックを勝利出来るのだから。

     さて、そんな牝馬クラシック――桜花賞に出走する馬は18頭とフルゲート。

     ウオッカにダイワスカーレット、アストンマーチャンと実力馬が揃っており、好勝負が期待されているのは、観客の数も相まって一目瞭然。

     その中にKanonファームのトロピカルサンデーが含まれており、久しぶりに多様多種のメンバーが揃っている。

     OP勝ち馬や短距離路線――フェアリーS組など、盛り上がりにくい牡馬路線よりも、牝馬の方が強いと現3歳馬の評価になっている位。

     因みに本命のウオッカは桜花賞後にオークスでは無く、日本ダービーに出走するプランが既に決定している。

     それくらいずば抜けた評価なので、相対的に牡馬路線の評価が下がってしまっているのである。

     閑話休題。

     これだけの豪華メンバーが揃った桜花賞の中でトロピカルサンデーは4番人気に支持されている。

     とはいえ、大手競馬新聞では△▲▲注注、と印は押されているが本命の◎と対抗を示す○は1つも無い。

     他の競馬新聞でも精々、単穴――▲までしか押されていなかった。

     ただ、まだ2戦2勝――未勝利とフラワーCの勝ち馬としては破格の評価で、底を見せていない分、惑星としてここまで印を押されているといえる。

     因みに他馬の評価は以下の通り。

     ウオッカ:◎◎○○○

     ダイワスカーレット:○▲◎◎▲

     アストンマ―チャン:▲○▲△◎

     と、この3頭による一騎打ちになるというのが各競馬新聞の記者の見解だろう。

     そこを突くのが、まだ底を見せていないトロピカルサンデーという訳である。

     ただ、人気面の問題として、もう一つ上げられるのが女性騎手――佐祐理が騎乗している点が人気を落としている理由でもある。

     重賞は9勝も既に制している佐祐理だが、G�祇錣任亘悗姫錣�無かったのでその点が評価に分かれているのであった。

     上位3頭の騎手はベテランで実績も段違いなので、既に10年騎手を続けている佐祐理とは経験が違うのだから。

 

 

     コース状の脇には桜が咲き乱れており、春風によって幾多の花びらが空に舞い散っている。

     そんな中、18頭の精鋭が1枠1番の馬から順番に地下道から姿を現わしていく。

     そのたびに騒然とした観客からの歓声が響き、ただの重賞とはまた違う印象を見せ付ける。

     G�欺薺馨茲箸覆觝翰翰�は一瞬歓声に飲まれかけた様に、手綱を引っ張りトロピカルサンデーの動きを妨げてしまう。

 

    「……これがG�祇錙�ちょっと気合い入れないと持って行かれるなぁ」

 

     よし、と佐祐理は気合いを入れ直して、一度馬場の片隅で止めていたトロピカルサンデーを再び歩かせる。

     どれだけ、一般戦と重賞で成績と経験を上げていても、これだけの観客から視線を浴びるのは佐祐理には初めての事。

     なので、プレッシャーを感じてしまうのは無理がなかった。

     それも上位人気には及ばないが、4番人気と支持されているのは間違い無いのだから。

 

 

     馬主席では多くの馬主がスーツやドレスを着ている為、華やかな風景になっている。

     特に大手馬主の妻などは派手な衣装を好んでいるが、一際目立つのが女性馬主である名雪であった。

     短い髪を乱雑に切りそろえてスーツを着ている為、他の女性とは一線を駕している。

 

    「久しぶりのG�気�。さて、どうなる事やら」
    「名雪さんは随分落ち着いていますね。僕は担当した馬が出走しているので緊張しているんですが」
    「誰だってそんなもんだから安心しろ。一弥」
    「一弥お兄ちゃん、かっこわるいよ?」

 

     一弥の膝にチョコンと座りながら、緊張している一弥の顔を純真な目で見上げている。

     姪である祐にいわれてしまったら、立つ瀬が無いのか一弥は頭を掻くのみ。

     一弥にとっては担当馬の初G�議�戦となる訳で、その点では佐祐理と同じ心境を抱えていた。

     実家――イギリスにある倉田家の牧場でもある程度は慣れているのは、確かだが、Kanonファーム生産馬としては初めてなのだから仕方ない所。

     それに比べると、名雪はどっしりと構えてソファーに深く腰を落としている。

     自身が馬主になっても、秋子が社長だった頃からG�気篭賚�していたので、その事を思えば名雪の心境はまだ楽といえる。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特に無し。