今週の競馬はKanonファーム生産馬であるウインドロードが出走する。

     この馬は、まだ3戦未勝利と早い時期――2歳7月から出走していたのだが、初出走と2戦目は芝が一切合わなかったのか、掲示板を外していた。

     9着、8着と芝の成績上昇が見込めず、父がワンダーホースと呼ばれたアラジである為、ダートでの移り変わりに期待された。

     そして、名雪が芝からダート路線の変更を調教師に進言した3戦目は芝で惨敗していた成績がネックとされて、10番人気と注目すらされず。

     その3戦目の結果はあわや1番人気の馬を下して、初勝利が目前に転がり込む所だったが、写真判定で僅かに負けていたのが判明。

     結果は鼻差の2着だが、3着馬には3馬身近く突き放しており、ダート戦では芝よりも滅法強いという結果なので、名雪の見解が的中した形に。

     だが、好事魔多し。

     ここからという機運に乗りかけた直前にソエを発症してしまい、3ヶ月近く休養に入ってしまった訳である。

     こうした経緯があるのだが、他の未勝利馬よりも実力があると観客に判断されたのか、ウインドロードは1番人気に支持されている。

     とはいえ、3ヶ月という微妙な休養明けが嫌われたのかオッズは4.5倍前後で揺れ動いているのが現状。

 

    「さて、11月の未勝利戦依頼の出走だが、どうなるか」
    「馬体重はプラス10kgで2歳時よりもトモと胸先の部分にはしっかりと筋肉が付きましたし、私は期待していますよ」
    「まぁ、入れ込んでいる訳でも無いしな。ここは期待したい所だ」
    「しっかりと入念に乗り込んできましたので、入れ込む可能性は低いと思いますが、レース次第ですね」

 

     距離は1600mと父アラジが得意としていたので、子であるウインドロードもこの距離は得意とする可能性を秘めている。

     なので、名雪と調教師は距離に関しては一切の不安を持っておらず、唯一の不安点として挙げられるのが久しぶりのレースという点のみ。

     後は如何に結果を出すかを騎手に求めるだけ。

     そして、各馬に騎手が騎乗し、馬主と調教師は地下道に消えていくのを見守った。

     因みに騎手は今週までの実績でリーディング20位以内に入っており、重賞でもそれなりに結果を出している中堅どころ。

     前走から引き続いて騎乗しているので、ウイングロードの変わり身を一番実感している事だろう。

 

 

     東京ダート1600mはスタートから芝箇所が100mもあるので、外枠は加速を稼ぎやすいコース。

     ダートは本来、後ろから差すのが厳しいので、このコースでは最初の100mがある為先行し易い構造。

     そんな中でウインドロードは3枠3番と内枠からのスタートだが、芝が苦手な分、走る芝箇所が短い方が苦にはならない。

 

    「久しぶりの出走だから、どうかなと思っていたがチャンスはあるな」
    「3ヶ月振りだろ、その馬は。入れ込まないようにしてくれよ」
    「大丈夫ですよ。そっちこそ逃げ潰れて垂れないようにしてくださいよ」

 

     と、騎手同士でお互いに軽口を叩きながら腹の読み合いを警戒しつつ、レース発走時間が近づいてきた。

     各騎手はゴーグルを装着し、誘導員に馬を牽かせてゲート内に収まっていく。

     そして、最後は8枠に12番の馬が入り、スタートが切られる。

     1頭だけが真っ先に出鞭を入れられて、鼻を奪い単独で駆けていく。

     他の馬は無理について行こうとしない為、2番手の馬が実質的に先頭を走っているような状況。

     未勝利の3歳馬がそれだけ飛ばしても、勝てる見込みは少ないのでマークする騎手が少ないともいえる。

     しかも、馬場は前日の雨で稍重になっており、それが災いとして逃げている馬のスタミナを奪っているのだから。

     だが、それはウイングロードを含めた各馬にも共通しており、中には泥を被って走る気を無くした馬も。

     ウイングロードは中団辺りで馬群に包まれているので、泥を被ってしまい既に騎手も同じように泥だらけになっている。

     それでも、入れ込む事無く、しっかりと馬込みの中で前を見据えて何時でも仕掛けられるような状態。

     先頭の馬は2番手におよそ4馬身近くの差を付けて、順調に飛ばしているが徐々にペースが落ちてきている。

     新馬戦からの結果が全て着外という事もあって、その馬は最低人気が確実だったので騎手は早々と逃げ宣言をしていたのが事実。

     その宣言通り、徹底的に逃げていたが流石に最終コーナー直前では行き脚が無くなりズルズルと下がっていった。

     代わりに2番手だった馬が先頭に浮上し、ここから他の馬も騎手の 仕掛けに反応して徐々に進入してくる。

     そして、直線に入るのだが若駒なだけあって雨が降って脚抜きが良くなった馬場とはいえ、スタミナを奪われやすいのは事実。

     なので、誰もが一気に仕掛ける訳でもなく誰かが最初に仕掛けるかを待っている状況なので、未だに馬群が固まったまま。

     それが幸いとして先に仕掛けたのはウイングロード。

     馬群の中心をこじ開けるように進出すると、その勢いのまま他馬との差が広がっていく。

     他馬も追いかけようとするが、ワンテンポの差が大きく出てしまったのか勝敗は決する。

     結果、ウイングロードは2着に3馬身の差を付けて4戦目にして見事初勝利を飾った。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:アラジ……2歳時にフランスでG�気鬘馨,掘�同年にブリーダーズカップジュヴェナイルを勝利し、ワンダーホースと呼ばれた。