各馬、地下道を通り本馬場入場の為、18頭の馬が1枠1番から順次姿を現わしている。
多くの観客が居る為、歓声が地響きの様に中山競馬場を響かせている。
様々な歓声と熱気にあてられて、各馬の中には入れ込んでしまった馬もおり、返し馬を行う際に、立ち上がってしまう馬も居た。
しかし、上位人気に支持される馬は動じることなく、普段通り行う返し馬と同じように無駄な動作なく、軽く芝の上を駆けていく。
ラストリグレットも軽く厩務員にリードで牽かれた後に、ハミの部分に取り付けられたリードを外されると、芝の上を駆けていく。
あくまでも軽い準備運動程度の走りなので、芝の感触を確かめる為の儀式な様なもので、どの馬も内ラチを走らないように仕向けられている。
既にレースで僅かに荒れているとはいえ、本番の皐月賞前に更に荒らす必要はないだから、どの騎手もそこは弁えている。
ラストリグレットは外枠――6枠11番からのスタートである為、外の芝が荒れていない部分を走ることが出来るのが有利な点だろう。
「さて、どう攻めるべきか」
祐一もその点は理解しているので、無理して内に寄る必要がない為、如何に内枠寄りの陣営よりも、コースロスを少なくするかが鍵となってくる。
大外枠の8枠18番にはアンライバルドがおり、脚質が差しから追い込みを得意とするタイプなので、向こう正面辺りから徐々に仕掛けてくるのは明白。
ラストリグレットは差しも出来る先行馬だが、中山競馬場では枠の位置も相まって、中団に付けるよりも、前々の方が向いているだろう。
当然、他馬のペースや動向次第ではガラリと変わるが、既にスタートまで5分程度なので、祐一は腹を括らなければならない。
「……仕方ない。出たとこで勝負するしかないか」
ある程度の作戦は元から考えていただろうが、基本的にどの騎手も作戦の選択を上手く手繰り寄せて掴んだ先が1着なのだから、スタートした時点で既に多くの選択は捨てている。
祐一は軽くキャンターを済ませると、ラストリグレットを歩かせて待機所に向かう。既に数頭の馬が輪乗り状態で、待機所内をぐるぐると周回しており、レース開始時間が刻々と近づいてきた。
他陣営の騎手は既にゴーグルで表情を隠しており、最後の最後まで作戦を練っているのが窺える。
勿論、祐一も本馬場入場前にはゴーグルをして、表情を隠しているので、他陣営から見ても表情は窺えないので、お互い様といったところ。
そして、各馬はゲート前に集合する時間となり、悠々とゲート前に向かい、待機していた誘導員の手のよって、ハミとリードが繋がれる。
既にレースを経験している馬なので、レース直前ということは分かっており、無駄に入れ込む馬も居ない。
居たとしても、それはファンファーレが演奏され、観客の高揚が一体感となり、最高潮になった瞬間に溢れる熱気――歓声が競馬場に響いた時だろう。
そして、スターターが発走台の上に登り、赤旗を振るうと同時に中山競馬場特有のG�汽侫.鵐侫 璽譴�演奏される。
「各馬、順調にゲートに収まって、今スタートが切られました」
大きく出遅れた馬は居ないが、綺麗に揃ったスタートではなく、僅かに1頭が加速付かなかったため、スタートから他馬に接触していた。外枠からのスタートである、リーチザクラウンはスッとスタートは切れたが、
大外からベストポジションを得るために、最初から勢いよく駆けて、第一コーナーを回る際に間際で走っている馬から3頭分程離れた位置に。
1番人気のロジユニヴァースは最内からのスタートなので、絶好という程でもないが、悪くない形で出ており、5〜7番手の位置をキープして、荒れている芝を避けるように僅か1頭分だけ外に出している。
3番人気のアンライバルドは10番手辺りに位置しており、1コーナーを回った辺りで、一瞬のみ馬群が先行集団と後方集団に分かれ、その後方集団の中で先頭を走っているアンライバルド付近が明暗を分ける境界線の様に。
そして、ラストリグレットは悪くないスタートを切れたが、枠の中途半端さもあって、スタートから積極的に先行していく。
とはいえ、行き過ぎると後半に響いてしまうので、祐一は真横からリーチザクラウンがラストリグレットを抜き去ったのを見て、これ以上行くとハイペースになると予想したのか、
ここで勢いを弱めて、ロジユニヴァースと同じ番手から進める。
そのため、ラストリグレットの方が外に居るため、ロジユニヴァースは内に閉じ込められた状況になってしまう。
下がろうにも、後ろには中団に付けていた馬が居るので、外に出すタイミングはレース終盤でないと厳しい。
この時点で好位置を得たのはラストリグレットとアンライバルド。
向こう正面を過ぎた辺りで、各騎手の動きが徐々に静から動に変わり、レースの終わりが近づいてきたのが分かる。
3コーナーを前にして、リーチザクラウンが先頭を奪うも、ここまでの無理が祟ったのか、今ひとつ反応が鈍い。
ロジユニヴァースはようやく外に出せたが、こちらは内ラチを走っていた弊害か4連勝していた面影が見えない。
最終コーナーを回り、一気に外からまくってアンライバルドが先頭に立つとその勢いを維持したまま、真っ先にゴールに飛び込んだ。
ラストリグレットは外から脚を伸ばしたが、態勢が決しており、最終コーナーを回る際にやや囲まれてしまったので、4着が精一杯だった。
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この話で出た簡潔競馬用語
特に無し。