ラストフローズンが出走する中山記念が開催される。

     前走のマイルチャンピオンシップ以来の出走となるが、まだ人気の衰えなどは感じさせず、むしろ前年の特別賞を得た事でますます人気が出たと言い切れる。

     それ程の観客がラストフローズンの中山記念を観戦する為に、中山競馬場にやって来たのだから。

     勿論、大半は馬券目的の方がメインとなるが、オグリキャップの血統という珍しさもあって、馬券目的とはいえない観客もチラホラ見かける状況。

     こうして、競馬ファンが増えれば日本競馬協会としては万々歳なので、ラストフローズンの結果がキチンと出て欲しい所だろう。

 

    「いつの間にここまでの人気になっているとは」

 

     名雪にとっては予想外の人気っぷりで、思いがけない人気により、この様な言葉が洩れてしまう。

     他の出走馬にはカンパニーなどもいるが、どう考えても人気面ではラストフローズンに勝る馬はいないので、この人気は事実として受け止めるしかない。

 

    「……こうなると、勝って盛り上げてもらわないと駄目だな」

 

     望まれやすい形としてはラストフローズンの最も実力を出しやすい、叩き合いを演じて勝つ事だが、どの陣営もラストフローズンの長所であり、短所でもあり得る弱点を知っているのだから。

     そう展開通りのレースにはならないだろうというのが、予想されている状況。

     とはいえ、先行から差しの脚質が出来るラストフローズンなので、他馬の様子を見ながらレースを出来るのは大きな強みでもあるのだから。

 

 

     中山記念の前に、テンペストクイーンが未勝利戦――小倉芝1800m戦に出走し、ブラッドハウンドが小倉芝1200mの未勝利戦に出走。

     ブラッドハウンドは前走が2着だったので、そろそろ勝利して未勝利戦を抜け出したい所。

     テンペストクイーンは前走10着からの巻き返しを狙うが、評判馬が出走しているので、次走に繋がる走りが見られればという辺りの評価に落ち着いた。

     ブラッドハウンドは10頭中3番人気。

     テンペストクイーンは12頭中12番人気という評価になってしまっている。

     さて、結果の方だが、ブラッドハウンドは3戦目にして未勝利戦を勝利した事で、次走からは500万下となるので、ここで短期休養となった。

     4月の阪神か5月の京都辺りでの復帰を目指す事になる。

     今の所はそこまで高く評価はされにくい状況だが、フォックステイルとサンユベールを姉に持つので、重賞挑戦の時があるかもしれない。

     とはいえ、3歳短距離路線の重賞はほぼ無く、夏になったら古馬相手に出走しなければならないので、前途多難だろう。

     なので、この時期の短距離向きの3歳馬は必然的に、マイル前後のレースを使う事になるので、短距離馬は勝ち上がりにくい現状。

     テンペストクイーンの方はまだ、結果に結び付くような走りではなく、後方のまま、下がってきた馬を交わしたのみとなった。

     この結果では流石に見所がなかったので、厩舎に置いたまま調整を続ける方針。

     上のウインドロードとオルタナティブも評価は今一つながら、それぞれ3勝ずつ上げているので、突然爆発する可能性も秘めている。

     とはいえ、欧州血統のファンタスティックライトを父に持つので、勝ち上がりは上よりも遅く未勝利のまま引退の可能性も。

 

    「テンペストクイーンはもう少し長い距離の未勝利戦があれば、優先してっていくようにします。ただ、現時点では中距離までしか選択が無いので、数こなしてレース慣れをさせるしかないでしょう」
    「そうしてくれ。今は数を使って鍛えた方がテンペストクイーンには向いているだろう」
    「まぁ、この血統ですし、何処かで穴を開ける事を期待しましょう」

 

     名雪はテンペストクイーンの調教師――小倉の方には調教助手が向かっているので、この場で次走の打ち合わせとなった訳である。

     尚、この調教師の出走馬はこの後の4歳以上500万下に出走し、無事に勝利を上げている事を記しておく。

 

 

     そして、中山記念の発走時間となる。

     ラストフローズンは5枠5番からのスタート――GⅡにしては少々寂しい10頭立てのレースになってしまったが、この頭数なら5枠は悪くない。

     出走頭数が多ければ、外枠は不利だったが、この頭数ならば外から内に移動しやすいのだから。

 

    「最後に8枠10番の馬が入りまして、今スタートが切られました」

 

     ゲートが開き、各馬一斉に飛び出したが、先頭を奪うように積極的に行く馬が居ないので、淡々と馬群が出来上がりつつある。

     ラストフローズンは良くも悪くもないスタートを切り、外から少しずつ進路を内に向けていく。

     5~7番手辺りをキープしているが、横にピッタリとくっ付かれているので最終コーナーを回る際に内からの圧力で、距離ロスに注意しなければならない。

     下げると、ラストフローズンの後ろに居る馬が外に進路を出して、ラストフローズンを封じ込める事が出来る状況。

     とはいえ、ラストフローズンに向く状況なので、このまま競り合いの形で最後まで行ければ、最高の展開には違いない。

     ただ、最後の直線まで相手が競り合ってくるとは限らないので、外を回している間に内から攫われる可能性も。

     そして、騎手が判断したのは横の馬よりも半馬身前に出て、外からの圧力を強めて、最終コーナーで前に出ている分、他馬を射程圏内に置きやすい。

     そして、最終コーナーを回るが前に出ている分、弾き飛ばされることなく5番手付近をキープしたまま。

     内枠から5頭分程は離れてしまっているが、横に居た馬は既に脱落しているので内に切り込んで、他馬と競り合う状況に持ち込む。

     そして、他馬を1馬身程離した所でゴールだった。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特に無し。