――ラストフローズン、中山記念に向けて順調。
中山記念1週間前にして調教パートナーを5馬身後ろから追いかけて、最後は半馬身差で抜け出す。
この様な見出しが競馬新聞に書かれており、どの競馬新聞も評価は仕上がりを強調したものとなっている。
基本的に圧勝するタイプではなく、競り合いに強いタイプなので、半馬身だけ抜いた所でゴールしたのは、普段通りの形が出来ている事を示す。
逆に半馬身遅れて居れば、闘争心が乗らず、出来が今一つというのが伺えるので、記者も分かりやすく判断する事だろう。
去年のマイルチャンピオンシップ以来の競馬だが、中山で3戦1勝2着2回の実績で、距離も1800mと得意な距離なので、負ける要素は見受けられない、と書かれている。
距離は2000m前後までが最も力を発揮する舞台なので、中山記念は全ての条件が向いているのだから。
「ここまでは順調ですので、後は当日のパドックで入れ込まない事を祈るくらいですね」
「それはラストフローズンにお願いしておく必要があるな」
軽い冗談が言い合える程の余裕があり、ここを負けたとしても安田記念で結果を出せば良いので、これ位のやり取りは必要。
前走のマイルチャンピオンシップから約4ヶ月振りの出走となり、ここまでの長期休養は初めてなので、どうなるかは分からない。
現状ではダービーからオールカマーまでの3ヶ月が最長だったのだから。
「想定ですと、相手は去年の中山記念を制したカンパニーと今年の中山金杯を制したアドマイヤフジくらいですね」
「……今年の出走予定馬ではラストフローズンのみが4歳馬か。他が全部5歳以上でカンパニーが8歳で、アドマイヤフジが7歳か」
「経験の差が絶対にありますからね。圧倒的1番人気になるでしょうが、少しは勉強させて貰えそうですね」
ラストフローズンと古馬の成績は倍以上の差があるので、勝ち負けはともかく積み重ねられた経験の差は埋めがたい。
まだ10戦目となるラストフローズンは古馬との対戦は3戦目となるが、重賞での経験なので、他の4歳馬より早く経験を積んだのは間違いない。
「見所さえキチンと作ってくれれば良いんだが、それは枠と展開次第だから、今から言っても無意味だな」
そんな訳で、ラストフローズンは中山記念に向けて順調な仕上がりというのが判明した。
さて、今週の競馬は京都ダート1800mにギンガロウが出走。前走は京都ダート1400mのダートで6番人気ながら、捲り勝ちという結果を出しており、今回は適正距離と思われる1800mに挑戦。
11月以降未出走だったのは、2歳時のダート路線は短距離が多く、適正外のレースを使うよりもしっかりと調教して鍛える方を選択した為。
その為、馬体重は前走比+20kgと成長分がしっかりと感じ取れる格好となり、馬体の幅が華奢だった2歳時とは違い、ガッチリと筋肉質な馬体に。
とはいえ、父キャプテンスティーブの産駒は今一つ結果を残しておらず、現状では地方の重賞勝ち馬が代表産駒となり、中央競馬では2歳オープン戦で2着が主な結果。
なので、前走勝ちでもギンガロウの人気は12頭中6番人気と評価されて居ない所がある。
「前走から+20kgの状態は成長分としては良いですが……」
「新馬戦のメンバーもその後はそれなりの結果しか出していないから、評価し難いですね」
「ただ、距離は延長されたのでその点がどう出るかが、鍵になりそうですね」
パドック解説でも今一つの評価しかされておらず、距離延長のみがプラスとして取り上げられる位。
現状では入れ込みは見受けられず淡々とパドックを周回しており、他馬よりもその点は安心して見られそうだ。
「評価されていないが、掲示板には載れば十分か」
「こちらとしては3着以内には来て欲しい所ですが、そこは騎手に期待するしかないですね」
前走と同じ騎手が騎乗しているので、初騎乗の騎手よりはまだ安心出来るといった所。
ここを勝てば、騎手として300勝を達成出来るので、当の本人は早めに記録達成しておきたい筈。
そして、パドックを終えると各馬は地下道を通り、本馬場入場を行う。
結果としては、ギンガロウが2着馬を鼻差凌いで勝利し、騎手も300勝という目標も達成。
低人気に反発した形だが、前走の捲り勝ちと違って、今回は5〜8番手辺りの中団から、差し切り勝ちというレースぶり。
400mの距離延長による融通を見せた事で、今後はレース選択の幅が広がったのは間違いないだろう。
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この話で出た簡潔競馬用語
特に無し。