AJCCに出走したホワイトクラウドだったが、長距離でお馴染みの面子――ネヴァブションにマイネルキッツ、アルナスラインの御三家がおり、見慣れたものだった。

     似たような面子だったので、掲示板の上位を独占したのも古豪のみで出走した明け5歳馬の4頭は全頭掲示板外。

     1番人気は新鋭――5歳馬で、ここでは実績的にトップだったが、去年の有馬記念4着でも今回は8着と惨敗。

     なので、エアシェイディが勝利した去年と同じくやや荒れた結果となった。

     因みにエアシェイディはこのレースは3度目の出走で、2着1着でリピーターとして、今年も3着に入っているので、馬券的には狙い目だったといえる。

     掲示板に載ったのが6歳、6歳、8歳、6歳、6歳と、この時期と非根幹距離も相まって、歴戦の古馬の方が強いのも納得だろう。

     そんな古豪が集まったレースで勝利したのはホワイトクラウド。

     去年は後1歩が届かないレースが多かったが、明け6歳となった今回のレースはしっかりと粘りに粘っての勝利。

     去年の日経新春杯1着以降未勝利だったが、ネヴァブションを競り落とした所でゴールし、1年ぶりの勝利を飾る。

     これで、今年も天皇賞・春に向けての前段階としては、十分な結果であり、次走に阪神大賞典を使えばステップとしては良い傾向になるだろう。

 

    「これで1月中に重賞制覇を出来たので、去年の運はまだ下がっていないな」
    「フユノハナビの愛知杯以来ですね……2ヶ月振りで以来とか言っていたら中小から怒られますね」

 

     中小牧場の生産馬は一般戦の勝ちも厳しく、重賞制覇は夢のまた夢なのだから、一弥の一言は怒られても仕方がない。

     とはいえ、Kanonファームの成績向上による相乗効果か、日高地区の成績が僅かに上昇しつつあるので、本気で怒る者は少ないだろう。

     それだけKanonファーム生産馬の実力が上がってきた事を示すので、毎月1勝は重賞制覇をしていてもおかしくはない。

 

    「好調が続いていけば、もう一度大手牧場に肉薄出来る可能性もあるから、このまま突き進んでいきたい所だ」
    「そうですね。今年はダービーという目標が名雪さんにはありますし、突き進まないと駄目ですね」

 

     名雪は一弥の言葉に軽く頷くと、馬主席からウィナーズサークルに勝者として向かっていく。

 

 

     ホワイトクラウドの今後のローテーションについて、調教師と軽く打ち合わせ、変わらず天皇賞・春か宝塚記念という事なので、一安心といった所。

     去年の秋は海外遠征――メルボルカップに出走したが、見所無しの結果だったので、ホワイトクラウドは海外では実力を発揮しにくいタイプだったのだから。

 

    「さすがにこの成績だとドバイからの招待も無いだろうし、当初の予定通り、天皇賞・春か宝塚記念を最大目標にしてくれ」

 

     今年からドバイでも長距離戦――ドバイゴールドカップが開催される為、この時期に適鞍がない日本馬は遠征する可能性も。

     ただ、G�気任呂覆�G�兇裡械横娃娃軅錣覆里如�高額賞金でも約3ヶ月後に天皇賞・春が控えている長距離の一流馬は出走しないだろう。

     天皇賞・春を捨ててでもまでドバイゴールドカップに出走するのは、天皇賞・春では相手関係が厳しいOPからG�轡�ラスに絞られる。

 

    「ハネダニマケナイは招待される可能性が高いと思うが、京都記念からの始動予定だから、ドバイには向かわないと思う」
    「そうですか。それは残念ですね。ホワイトクラウドの勝算が僅かにでも上がると思っていたんですが」

 

     両馬とも名雪の所有馬だからこそ、こういう冗談が飛び出す余裕があり、ホワイトクラウドの充実期を窺わせる調教師の発言。

     今年で6歳――旧年齢でいえば7歳なので、最近の調教技術の向上によって、競走生命が長くなっているのがハッキリと分かる。

 

    「ホワイトクラウドにG�気鮑G�中には取らせたいとはわたしも思うが、だからといってハネダニマケナイを回避させる理由にはならない」

 

     名雪はピシャリとにべもなく、調教師の冗談をまともな解答で断る。ハネダニマケナイは菊花賞と宝塚記念を制しているが、天皇賞・春は去年が2着だった事もあって、是非とも勝利させたい所なのだから。

     実際の所、Kanonファームの生産馬は天皇賞に縁が無く、春も秋も2着が最高着順となり、後少しが届かない状況。

 

    「うちの様に長年継続している牧場だと、天皇賞のタイトルはダービーに次いで取っておきたいタイトルだし、その為には2頭出しでもする」
    「天皇盾は飾りがいがあり、一目で分かる勲章ですからね。一定の世代と歴史のある牧場では名誉として最高のものですしね」

 

     名雪にとってはダービーが悲観のタイトルだが、天皇賞のタイトルにも意欲がある事をハッキリと分かる。

     今年で春と秋を含めて139回目となる天皇賞。

     まずはホワイトクラウドが天皇賞・春に向けて、AJCCを制した事で道が開いた事だろう。

     ハネダニマケナイが京都記念でどの様な結果を残すかで、道が開けるか閉ざされるかが決まる。

 

 

     1部に戻る   2部に戻る     ← →

 

     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特に無し。