2009年となり年度代表馬の選定や、各リーディングの表彰――日本競馬協会の式典が行われ、その中には最優秀3歳牝馬と特別賞を受賞したサンユベールとラストフローズンの為、関係者が一堂する。

     2008年度の年度代表馬はまだ発表されておらず、各優秀馬の中から選定されているので、各陣営には待ち遠しい時に違いない。

     こうした式典だからこそ、大手牧場の社長が中心となり、セレクトセールの営業や、良い噂を持つ馬の情報を語っているので、その周りには人だかりになっていた。

     勿論、名雪も大手牧場の持つ情報やノウハウを得る為に積極的に近づいていく。

     日高地区に牧場を持つ者にとって、大手牧場は途轍もない壁であり、険しく聳え立つ山々だが、今はKanonファームが有する小規模ながら坂路がある調教施設で、日高地区の馬を鍛えている最中。

     規模も資金も現時点では負けているが、いつか逆転する為に名雪は近づくしかないだから。

     今の所は今年、産駒がデビューする種牡馬の評価に関する話だが、評価としては、古馬秋3冠を制したゼンノロブロイ産駒がトップといった所。

     それよりも来年の産駒デビューとなるディープインパクト産駒の方が走りますよ、と宣伝しており、周りの人垣から笑いが零れる。

 

    「ディープインパクト産駒は走りそうなんですね?」

 

     こうした場だからこそ、名雪は普段の口調とは違い、丁寧な物腰で場に透き通りやすい声で話しかける。

 

    「ええ、父であるサンデーサイレンスに匹敵する位、産駒は走る可能性が高いです」
    「そこまで評価されるなら、うちでも種付け権の購入を考えないと駄目かもしれないですね」
    「初年度に比べると種付け料は僅かに安くなりますから、お買いお得ですよ」

 

     一般的な感覚で1回の種付けで1000万は非常に高価なものであるが、2008年のセレクトセールの当歳部門で、

     最高売却額が2億前後で平均売却価格が6000万前後と高額な種付けにはギャンブルだが、産駒が生まれればリターンも大きいのが実感出来る。

     産駒が走るかどうかは不明瞭だが、少なくとも大手牧場がここまで評価するという事は、産駒の出来に自信があるという事を示しているのだから。

 

    「……ならば、種付け権利を1口買うのを考えさせて貰います」
    「流石に即答というわけにはいきませんからね。水瀬社長が購入されるのをお待ちしていますよ」

 

     式典なので、会場に添え付けられた酒の勢いもあるが、即答とはいかなかったが、名雪にはディープインパクトの種付け権利には魅力的に映ったのは間違い無いだろう。

     大手牧場は押しすぎると駄目だと分かっているのか、これ以上は種付け権利の販売に関する明言はせず、普通の談話に切り替わっていった。

     去年のG�祇錣鮨兇衒屬辰燭蝓∈G�のクラシック路線の予想などをしたり、至って普通の競馬会話。

     基本的に有力馬の話題なので、お互いに探り合ってローテーションの読み合いや依頼する騎手の予定などを耳に入れるつもりなのだろう。

     ここに居る騎手達も馬主に繋がりを求めて――リーディング上位でも、関係無く営業を行っているのだから。

     この場に居る騎手は障害騎手も含めて10名と、各受賞した馬の主戦だからこそ、良い馬に乗りたいという願望は強い。

     勿論、名雪の元にも去年の成績があるからこそ、その勢いをあやかろうとして騎手の方から挨拶に来る程だった。

     基本的に名雪から乗り代わりの指示はしないので、騎手の方から自ら営業すれば乗れる可能性が高い。

     そうして、名雪は騎手の攻勢をのらくらりと交わしつつも、それなりに繋がりが出来たようだ。

     そうして、時間が過ぎると2008年度の日本競馬協会の授賞式が開幕し、スポットライトが壇上に照らされる。

     2歳最優秀から順次に馬名が読み上げられ、各陣営が壇上に上がり表彰状やトロフィーを受け取っていく。

     そして、Kanonファームの生産馬であるサンユベールの馬名が読み上げられて名雪と調教師に騎手、厩務員は壇上に向かっていく。

     生産者である名雪が壇上に登り、続いて調教師に騎手と厩務員などサンユベールに関わっている者のみが、壇上を許される場所。

     名雪はG�気良従桓阿箸楼磴κ薫狼い魍擇靴澆弔帖�表彰状とトロフィーを受け取ると深く礼を行う。

     特別賞を受賞したラストフローズンも同様に行われた。

 

    「こうして、最優秀3歳牝馬と特別賞を受賞出来たのは、関係者の努力が実った結果と実力を常に発揮してくれた馬に感謝しかありませんね。

     来年は年度代表馬を受賞して、この場に立ちたいと思いますのでよろしくお願いします」

 

     名雪はそういって言葉を締めるが、実際に年度代表馬を受賞出来るかは今の所は不可能だが、自信があるのか言葉に偽りはなさそうだった。

     その結果が分かるのは来年になるまで待たなくてはならないが、どの陣営も狙っているのだから、簡単には受賞出来ないだろう。

     飛びっ切り抜けた実績を得ない限り、万場一致での受賞は不可能なのだから。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特に無し。