夏の競馬――ローカル競馬は全て終了し、これからのメインは中央――主に東京、中山、阪神、京都とローカル競馬場に移り変わる。
既に夏に休養を充てていた有力馬はそれぞれの厩舎に帰厩し、秋に行われるG�気陵ゾ,鯡椹悗靴篤阿�出す。
ウインドバレーもダービーグランプリの優勝を狙う為に帰厩して、調教をこなしている。
ジャパンダートダービーに出走した時に比べると、馬体重は+20kgと大幅に増加し、トモの筋肉が一回り大きくなっていた。
馬体の幅が変わり、まるで春の時とは別馬の様に馬体が変貌したので厩舎関係者の評価が著しく上昇した。
これも育成牧場で連日の調教を耐え抜いた賜物であり、これならばと言える程の馬体でトミシノポルンガを負かせる可能性もありえる。
それくらい菊地厩舎の関係者が色めき立つので、Kanonファームの関係者達も逸る気持ちを抑えてダービーグランプリの日を待ちわびている事だろう。
さて、夏競馬の間にKanonファームの生産馬が出走したレースを挙げていく。
全頭が休養していた訳ではなく、ウインドバレーを除いた馬が夏競馬に出走していた。
まずはサイレントアサシン。
OPクラスの壁にぶち当たっていたのだが、降級――OPから1600万下に移行したのでそれなりに結果を出せるようになっている。
それぞれのレースで低人気で4着→2着と相変わらず、低人気に反発して掲示板に乗ってくる。
続いてはサウンドワールドだが流石に衰えを感じさせる状態が長引いており、今年中に引退が決定するのも時間の問題だろう。
巴賞10着→関屋記念14着と皐月賞に出走した頃の面影は殆ど無いと言っても、過言ではない。
ミストケープは長距離のレースで消耗が激しいので、夏の間はキッチリと放牧に出して体調を整える事に勤めさせていた。
現状のクラスは1000万下で秋になればなる程、長距離レースが増えるのでこれからの活躍に期待しても良いだろう。
サンシャインレディとストームブレイカーは共に1000万下のクラス。距離適正も近いので同じ様なローテーションで夏を過ごしていた。
サンシャインレディは5着→3着と着順を上げており、アンバーシャダイ産駒らしく徐々に成長しているのだろう。
ストームブレイカーの方は8着→1着となっているが、これは距離短縮で1200m戦に挑戦させたのが原因。
次走の1600m戦でキッチリと勝ち上がっているので、マイルから中距離が1番適正――父サクラユタカオーと同程度辺りが向いているのだろう。
そして、2週間前に新馬デビューを果たしたブルーフォーチュンは前走と同じ距離――芝1600m戦に出走して見事に逃げ切り勝ち。
前走は初レースで惨敗だったが、結果よりもレース過程で得た経験を上手く引き出して2戦目で馬が走りを覚えてくれた様だ。
「夏の間は12戦2勝2着2回3着1回、と……それなりに走ってくれましたね」
秋子は黒のボールペンでノートに成績表を書き込みつつ、7月と8月の出走レースに対して感想も付け加えていく。
テーブルの上に置いてあった薄い青色のコップに秋子は手を伸ばし、カランと中身に入れている氷が音を立てる。
秋子はコップに注がれたアイスコーヒーを口に付けて、ふぅと吐息を悩ましく吐き出して、もう一度ノートをゆっくりと見開く。
この成績なら中小牧場にとっては十分な物であり、贅沢を言うならばもう少し勝率を上昇させたい所だろう。
「……サウンドワールドはそろそろ引退かしら?」
近走5戦の成績表が書かれた部分を開くと、4着→11着→9着→10着→14着とドンドン悪くなっている。
この成績なら、家族会議を行わなくてもあっさりと引退させても良いくらい。
もう一花咲かせる程の実績ではないし、厩舎預託料の事を考えるとスパッと見切りを付けるべき。
暫し、秋子は頬に手を当てつつ軽く瞳を閉じて思案し始める。
「一応、ちょっと意見を聞いてからの方が良いわね」
それだけを呟くと、ソファーから勢い良く立ち上がって背凭れに掛けてあった白のコートを羽織って放牧地に向う。
そして、サウンドワールドの進退に関する意見は以下の通り。
秋名:もう見切って良いだろう。
名雪:わたしだったら、とっくに引退させているな。
祐一:これ以上は走らないと思います。
ピロ:にゃー。
と、最後を除いて全員が引退の方向で一致したのでサウンドワールドの登録抹消は近いうちに行われるだろう。
こうして、Kanonファームの生産馬が又1頭ターフから姿を消していき、いつか誰の記憶にも残らなくなっていくだろう。
それが重賞を1つも勝利していない牡馬の定めなのだから。
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この話で出た簡潔競馬用語
特に無し。