ユニコーンSの結果が競馬雑誌に掲載され、日曜日に主催された安田記念結果よりも扱いは低いが、それでもカラーページに載っている。
ゴール前の写真と記者の簡単なコメントで締めてあり、内容は以下の通り。
――最後には猛然と最後方から首差まで追い詰められたが、走りの内容は次走のジャパンダートダービーでも実力を示せそうだ。
ただダート戦で唯一の敗退はジャパンダートダービーが行われる大井での全日本2歳優駿だった。
なので、如何に中央よりも重厚なパワーが必要な大井競馬場で切れ味を見せ付けるかが問題である。
と、賞賛と問題点が一緒に書かれており、現時点では妥当な評価を受けている事がキチンと窺える。
実際にウインドバレーは軽快パワータイプで、重厚なパワーで突き進む重戦車型の馬では無いと言い切れる筋肉のつくり。
母母父であるへイルトゥーリーズンの影響が濃く出たのか、筋肉はしなやがで柔らかさを持つ。
そして、ミスタープロスペクターの重厚な筋肉が中和される様に形でウインドバレーに遺伝したと言う事。
重厚な筋肉では無いが、しなやかな筋肉を持つウインドバレーには切れ味が発揮しやすいタイプ。
そう、陸上競技の100m走で圧倒的に強い黒人の様に重厚なタイプは短距離では実力が1番発揮する。
ウインドバレーはこの事を当て嵌めると、マイルから中距離ぐらいの距離でダートが深くない場所が良いと思われる。
「評価と指摘がキチンとあるから、ここの雑誌は良いんですよね」
「評価だけをされても、持ち上げられている様に感じるしな」
秋子は前日の飲みすぎによる二日酔いの影響は殆ど無い様で、普段通りに牧場作業と経営を行っている。
逆に秋名の方が二日酔いになった様で、幾分か顔色がいつもより青白い状態だが、前の様に朝食抜きは御免被りたいのだろう。
秋名はそのお陰で、心なしか何時もよりもテキパキと行動している様に見受けられ、名雪と祐一が驚愕の表情で秋名の動きを追い続けてしまう。
「珍しい……明日は雨が降るんじゃない?」
「いやいや、槍が降ってもおかしくないぞ」
一理あるね、と名雪は大げさに頷き祐一の言葉に同意してしまう。
2人が大げさ表現してに言うくらい、朝の秋名は動きが緩慢でのんびりしている様だ。
その事を直に言われた秋名本人は肩をフルフルと小刻みに震わせて、怒りを収め様としているが、普段の性格から自身を止める事は不可能だった。
そして、Kanonファームに一条の雷が落ちてしまった。
今年の2歳馬の馬名が全て決定し、内容は以下の通り。
ブルーフォーチュン……フォティテン×フラワーロック。
エアスパイラル……ワカオライデン×ファントム。
ヤマトノミオ……グランドオペラ×クイーンキラ。
どの種牡馬も種付け値段は安く、フリーリターン制度に該当している種牡馬だが、それぞれの血統は悪くは無い。
グランドオペラは特に血統が非常に良く、配合次第では走る馬を輩出しそうな血統構造。
伯父にアメリカG�鞠呂離妊凜�ルズバッグがおり、半弟には現在種牡馬になっているラーイが。
フォティテン自身の重賞勝ちは1つだが、母母――2代母はアメリカG�気鮴�して、4代母はアイルランドオークスの勝ち馬として名を刻んでいる。
この中で唯一、内国産馬のワカオライデンは日本の名馬テンポイントを伯父に持っているのが選ばれた理由。
現時点では唯一、テンポイントの系譜を受け継いでいる血統なので、秋子も細々となっても続いて欲しいと願っている血脈。
因みに現役馬の中にもテンポイントの系譜を継ぐ、4歳馬フジヤマケンザンが。
「テンポイントがあのレースで亡くなって、14年ですか」
「……その時はTVで見ていたのか?」
フルフル、と秋子はゆっくり左右に首を振り見らなかった事を肯定し、その時は大学受験でしたから、と懐かしむように一言付け足す。
京都競馬場ではさぁ勝って海外だと言う矢先に起こった事件なので、悲痛の声が響き渡り続けていた。
日経新春賞の後は海外遠征が確定していたテンポイントだが、このレース中に故障を発生して安楽死処分に取られそうな所でファンの声で治療に。
この治療法が現在の治療技術にも繋がっているのは、皮肉としか言い様は無いが、多数の馬を救っている事を考えると貢献しているだろう。
因みにその時に背負っていたハンデは66.5kgで、これが作用して障害レースを除きハンデは大量に背負う事は無くなっていく。
「いつか、人気と実力を兼ねた名馬を生産したいですね」
「先は非常に長そうだがな。まぁ、何とかなるだろう」
ニヤリと口端を吊り上げて、秋名は秋子の肩を意味ありげに軽く叩いた。
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この話で出た簡潔競馬用語
注1:ラーイ……グランドオペラから父はブラッシンググルームになっている。
注2:デヴィルズバッグ……ヘイローを父に持ち、マイル前後での活躍が多い。
注3:フジヤマケンザン……3歳時には菊花賞3着の実績あり。