3月。

     季節は冬と春の境目を越えて、勢力図が徐々に春に近づいて来ている頃なので陽気な天候がそれに従い増加。

     陽光が融けかけている雪に反射して、キラキラと雪原を輝かせているので眩しさを感じる。

     だが北海道ではまだまだ肌寒い時期が続くため、本州よりも気温が低く春の息吹はなかなか聞こえてこない。

     そして、Kanonファーム付近の山々にはまだ純白の雪が覆い被さって、雪で白く染まった放牧地をバックにした絶景が出来上がっていた。

     その風景には放牧中の白毛馬が一緒に風景に溶け込んでしまい、青い馬服を着せているが、それと純粋の黒い瞳を除くと風景に溶け込んでしまっている。

 

    「雪景色でここまで見えなくなるとは思わなかったよ」

 

     名雪は雪が降り始めた11月頃の事を思い出し、その時は白毛馬が現在の様子と一緒だったので、クスッと口元に笑みを浮かべる。

     名雪は放牧地の中に入り、リードをクルクルと回したりして弄びながら白毛馬に近づいていく。

     そして、佇んでいる白毛馬の頭絡にリードをセットし、厩舎に戻すために曳き連れて行く。

     やや冷え込んだ空気は白い吐息を空気中に作り出して、馬の荒々しい鼻息と名雪の優しい吐息が混じりあって空中に四散する。

     名雪は首に巻いている赤いマフラーを口元に引き上げて、くもぐった声で一言だけ簡潔に、寒いなーとぼやく。

     名雪は軽く身体を震わせながらリードを曳きながら厩舎に向かっていくが、馬の歩幅が小さく周辺を見渡しているので進んでいかない。

     馬が周辺を見渡している時には名雪も立ち止まり、馬が満足するまでその場で待機しなくてはならないので、寒いのも当然だろう。

     何かを眺めていた白毛馬は興味が無くなったのか、スタスタと動き出して名雪が逆に曳きずられそうになるが何とか踏みとどまって歩きだす。

     そして、雪原の上に4つの蹄と2つの足跡を残しながら厩舎に向かって行った。

 

 

     今週の競馬にはサンシャインレディ、ミストケープとストームブレイカーが出走する。

     サンシャインレディは未勝利戦、ミストケープは1000万下クラスに、ストームブレイカーが500万下。

     今年の勝利は未だにウインドバレーのヒヤシンスSのみとなっており、去年はこの時期まで4勝もしていたので明らかに減少。

 

    「そろそろ1勝はして欲しい所ですが……」

 

     この中ではどの馬も期待が持てるのだが、確実に勝利出来るとは言い切れないので秋子の口からは願い事が洩れてしまう。

     現状のエースであるウインドバレーがいるのは頼もしいのだが、1頭だけでは勝利数は増加しにくいので他の馬も勝つ事が必要。

     そうこうしている内に、サンシャインレディが出走する未勝利戦がダイジェストで放送され始めた。

     赤いヘルメットと秋子が馬主である象徴の勝負服を着た騎手が外からサンシャインレディを巧みに操って勝利に導いていた。

     このレースは中山芝1600mで行われていた。

     距離は前走よりも400m長くなったので、ジリ脚――長く脚が使えるタイプな分、早仕掛けで差し切った印象。

     これで、未勝利クラスを脱出したので次走からは500万下に出走が可能になった。

     続いてのストームブレイカーの500万下も同じようにダイジェストで紹介されている。

     今回は500万下特別の雪割草特別であり、距離は1400mと非根幹距離のレースだったが結果は4着。

     新馬戦の時にも1400m戦に出走していたが、その時は出遅れての6着だったので秋子は悲観をしていなかった。

     今回のレース振りは至って問題無さそうな走りを見せていたのだが、中団から追い上げたのだがエンジンの掛かりが遅く、ややもたついた感じでゴール。

     このレース結果から見る限り、距離適正は1600mからがストームブレイカーの向く距離なのだろう。

     最後に中京芝2000mで施行される遠州灘特別にミストケープが出走。

     レースは中継で放送されるため、先ほどの2つと違いスタートからゴールまでキチンと視聴可能。

 

    「さて、どうなりますかね?」

 

     直線脇のコースからスタートし、ゴール前――観客席の前を通る為、歓声で入れ込まないかが一番の問題。

     ミストケープは真ん中――5枠6番からのスタートなので、入れ込んでも馬群の壁に押し込めて落ち着かせる事が可能。

     そして、スタートが切られる。

     G�気箸枠罎拱�にならないが、それでも歓声がTVから聞こえており、その声を聞いて入れ込む馬が登場し、レースを引っ張ってしまう。

     ミストケープは6番手辺りをキープしつつ、馬群の中でレースを進めている。

     逃げ馬もおらずペースは落ち着いているので、平均のまま淡々とレースラップが刻まれていく。

     向こう正面に入り、残り1000mの付近を過ぎた所で1頭の馬がズルズルと下がってしまうがミストケープには影響がなかった。

     だが、その馬は故障を発生したようで競走を中止してしまい、残りは11頭でのレースになってしまう。

     秋子は故障馬が出た瞬間にTVの電源を切って眼を背けてしまう程、出走馬が故障発生のシーンはまだあの日(1984年のダービー)から引き摺っているようだ。

     因みにミストケープの結果は5着と、それなりには走った結果になった。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特になし。