ウインドバレーがヒヤシンスSを2.3/4馬身突き放して勝利した事で、若葉Sに出走する事が完全に確定した。
初の左回り+ゴール前の坂で勢いが途切れるかと思われたが、更に加速出来たのは十分な収穫だろう。
競馬新聞にはフェブラリーSの勝ち馬の方が大きく取り上げられているが、それに負けないくらい評価が高い事を掲載されていた。
そして、調教師のコメント欄には完勝の事と次走について示唆されている。
『完勝だったね。これなら次走予定の芝レースでも可能性は残せそうだね』
この結果ならば、地方交流戦に出走しても十分な結果を残せるだろうし、G�気任眩雲鐔侏茲襪斑埜世浪椎宗�
ただ、次走の若葉Sは初めて芝コースで走るので、どれだけ走るかは検討が付かない状態。
挑戦しないと結果は何とも言えないので、走らなかったらキッパリとダート路線に戻す予定だけは決まっている。
クラシック路線に乗る為には芝の実績が必要不可欠であり、前走がダート戦の皐月賞馬は81年から91年まで過去10年1頭もいない。
デビュー戦から数戦だけ諸事情でダートを走っていた馬はいるが、全戦がダートからの皐月賞馬は51回行われている中でも類を見ない程。
なので、ウインドバレーが一度芝路線に挑戦するのは至極正しいと言える。
「これで、若葉Sが楽しみになったわね」
「そうだね……でも芝適正と距離が不安かな?」
うーん、と名雪は自身の考えを述べてから、テーブルの上に置かれているコーヒーカップに手をつける。
名雪はミルクがたっぷりと入っているカフェオ・レを飲みつつ、ホッと一息を吐いている。
ウインドバレーがヒヤシンスSを勝利した事も含めた一息なのだろうか、その表情は目尻が下がった状態で和らいでいた。
ふふっ、と秋子は名雪の表情を見ながら微笑んで自身も淹れたてのホットコーヒーに口を付けだす。
ちょっとしたコーヒータイムが終了すると、秋子はスクラップノートをサイドボードから取り出して競馬新聞の一部を切り取りだす。
チョキチョキ、とリズム良く軽快にウインドバレーの記事は切られていき、ペタペタと糊付けしていく。
そして、完成。
記念すべき3冊目になったスクラップノートの最初のページにはウインドバレーのヒヤシンスSが貼られている。
そのシーンはゴール前の写真であり、内馬場から撮られていて迫力がある物。
「随分とカッコ良いよね、この写真」
「そうね、写真パネルを頼んで自室に飾ってみたら良いんじゃないかしら?」
その言葉に名雪はポンと両手を合わせてから、秋子の案に納得したようで顎にほっそりとした手を添えて何かを考え始めたようだ。
恐らくだが、頭の中で写真のパネル代などの計算を考えているようで、少ない小遣いをやり繰りして購入するプランを検証中なのだろう。
因みに名雪と祐一の小遣いは牧場作業の時間給で決定しているので、働いた時間が少ないほど小遣いが減少してしまう。
なので、朝からキチンと働いて学校から帰って来た後も手伝えば、時給200円×8時間ほどで1600円は得られる計算。
この計算で行くと1ヶ月で48000円近くも得られ、同年齢よりも遥かに多くの小遣い――給料を手にしている。
実際は秋子が手渡すのは1割で、残りの全て金額は貯金されているのが事実だが。
閑話休題。
自身と祐一の手で、ウインドバレーを育てたので名雪には贔屓目で格好良く映るのかもしれない。
名雪は惚れ惚れとした表情になって、ジッとスクラップノートに貼られているウインドバレーの写真を眺め続けた。
今年は3頭の2歳馬が入厩予定であり、まだ馬名だけは決定していない状態である。
入厩予定馬の血統は以下の通り。
フォティテン×フラワーロック……青毛、牝馬。
ワカオライデン×ファントム……栗毛、牡馬。
グランドオペラ×クイーンキラ……鹿毛、牝馬。
グランドオペラ×クイーンキラの配合は名雪と祐一が考えた物で、2人にとってはどれだけ活躍するかが1番の楽しみだろう。
フォティテン以外の種牡馬はどちらかと言うとダート路線向きの血統で、ウインドバレーに続く馬が現れるかもしれない。
「さて、どんな馬名にしようかな?」
うーん、と名雪は唸りながら出てきた案をメモ用紙にサラサラと子供らしい丸みのある文字で書き込んでいく。
1つ目の部分にはブルーフォーチュンと書かれ、フォティテン産駒に付けるのが決定したようだが、残りの2頭は未定となっている。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。