ウインドバレーの出走レースの話し合いが電話越しで行われており、様々な意見が出ているようだ。
ダートOP戦は2月まで1戦も無いので、芝レースを叩いてから結果次第ではクラシック路線に乗せるなどetc。
秋子としては、この提案に魅力を感じているのか僅かに視線がユラユラと周辺を探るようにさ迷っている。
それくらい魅力的な話だが、適正面から考えると芝レースに関する未知数な事が1番議論に上がってくる。
ダート路線ならばそれなりに成績を収めてくれるだろうが、リスクを念頭に置いてクラシック路線に進ませるのもあり。
勝ちを求めるなら地方レースに出走して、ジャパンダートダービーを春最終目的にするのがローテーション的には1番良い。
詳しく言うなら、ヒヤシンスS→伏竜S→兵庫チャンピオンシップ→ジャパンダートダービー。
交流戦の充実でこのようなローテーションが考えやすくなったのはダート馬には嬉しい限りだろう。
もしも芝レースを使うならの出た意見では、若葉S辺りを一度挑戦してみるプランが浮き上がっている。
「うーん、とりあえずシクラメンSからの始動はどうでしょうか?」
秋子が考え出したプランは、シクラメンSの3ヶ月後に行われる伏竜Sまでの間隔が開きすぎる事が問題なので途中にレースを組む案。
2月の半ばから5月の半ばと約3ヶ月も開くのは、体調維持が厳しい事も含めてある。
電話越しで話しているので菊池調教師の表情は分からないが、秋子の表情を見る限り、この案が可決されたのだろう。
「では、このローテーションでお願いします」
秋子は受話器を置き戻して、ふぅと目頭を押さえつつ吐息をゆっくりと吐き出す。
これでウインドバレーのローテーションが確定したので、後は如何に体調維持したままレースに出走出来るかが調教師に掛かっている。
「お疲れ……ほれ、私が入れたコーヒーだ」
ユラユラと立ち昇る湯気が伸びており、淹れたてコーヒーの独特の甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
「ありがとうございます……もうちょっとドリッパーに注ぐ際にゆっくり淹れた方が良いですよ」
「まだまだ、秋子には敵わないか」
はふう、と大きく溜息を吐きつつ秋名はローテーションが決定した時に秋子が書いたメモをゆっくりと見る。
「1回だけ芝を使ってみて、結果次第ではクラシックか」
「ええ、ダービーは不可能でしょうが……皐月賞なら距離適正がギリギリだと思いますし」
若葉Sは皐月賞のトライアルレースなので、2着までに入れば皐月賞の優先出走のチケットが手に入る。
今年のクラシックはミホノブルボンの1強だと言われる位、他馬のレベルに差があるがあれだけの逃げをする馬が距離適正は長く持つとは思えない。
これが現状のミホノブルボンの評価であり、絶対王者と言い切れないのが付け入る隙だと言われている。
そのミホノブルボンはスプリングSからの出走となっており、別路線から若葉Sに出走するウインドバレーは別の意味で脅威的な扱いだろう。
「と言う訳で、一度芝に挑戦させてみた方が後のローテーションが選びやすくなりますしね」
「実際の所、ミスタープロスペクター産駒には芝重賞勝ち馬いるのか?」
「マキャヴェリアンや英1000ギニーと仏1000ギニーのラヴィネラが居ますから適正が無い訳ではないでしょう」
秋名は納得したようで、冷めかけたコーヒーを口に付けてから、秋子が淹れた方が上手いな、とボヤキながらゆっくり飲み干す。
今週はルリイロノホウセキが出走する。
前走は500万下を勝利した事で、1000万下クラスに昇格したのだが流石に厳しい予感がしている。
馬体重も去年からそれほど増加していないし、早熟だと思われる血統の影響で成長力が乏しい。
それでも今年一杯は出走させる予定なので、繁殖入りは来年の予定となっている。
「さて、レースはどうなりますかね」
「良くて掲示板くらいだろうな」
レースは既に中盤辺りで、向こう正面を走っている所だが位置取りは後方から数えた方が早い。
距離は京都芝1200mなので、後ろからでも差せるかもしれないが、芝がボロボロ状態では厳しい。
そして、直線に入る。
ルリイロノホウセキは16頭中14番手から11番手に上がるが、それ以降は鞭が入っても手綱を押しても伸びない。
結局、ルリイロノホウセキは後方のまま11着でゴールイン。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。