――今年1年の競馬は無事にとは言いがたいが、全レース終了した。
特に古馬路線は圧倒的に混沌とした路線と言い切れるくらい、まともな結果では無い。
天皇賞・秋はメジロマックイーンが1着入線も、東京芝2000mの特殊コースが原因である斜行によって18着になってしまった。
そして、勝ち馬は2着だったプレクラスニーが繰り上がりで優勝したが、マックイーンとの着差は6馬身も付けられていた。
プレクラスニーの陣営は“棚から牡丹餅”と幸運が舞い込んできたのだが、次走の有馬記念でも結果としてはマックイーンに敵わない。
その有馬記念の勝ち馬は15頭中14番人気――ブービー人気のダイユウサクがメジロマックイーンを強襲して差し切りしてしまう。
調教師によると、数日前に有馬記念で優勝する夢を見た様でその時のゼッケンが本番も8番だったので勝利を確信したらしい。
その結果の通り、正夢とは予定調和を作り出してしまうので、現役最強馬の地位にいたメジロマックイーンですら敵わないようだ。
そして、ジャパンカップはアメリカ生産馬であるゴールデンフェザントが勝利してしまい、2着と3着も海外馬が独占してしまう。
日本最先着は4着に食い込んだメジロマックイーンが掲示板に乗ったのみで厚い壁を感じてしまう出来事。
そのため、今年の秋古馬3冠は悲運が重なり続けたレースだと言い切っても良い。
続いてはクラシック戦に移してみよう。
皐月賞と日本ダービーの2冠馬トウカイテイオーが故障発生による長期離脱で菊花賞は空洞化かしてしまい最後の1冠に賭ける馬が出走。
そして、最後の1冠――菊花賞では順当に日本ダービー2着馬であるレオターバンが勝利。
“if”になるのだがトウカイテイオーが出走していればシンボリルドルフに続く親子2代無敗3冠が見られたかもしれない。
牝馬路線の秋華賞も牡馬クラシックとは違い新興勢力であるリンデンリリーが勝利し、牝馬5強は過去の彼方に消え去ったような結果。
エリザベス女王杯は前年の秋華賞馬であるイクノディクタスが3歳牝馬勢を押さえ込んで勝利。
短距離路線の方は久しぶりに王者――女王が誕生したと言える結果になり、マイルチャンピオンシップはダイタクヘリオス。
スプリンターズSはダイイチルビーがマイルチャンピオン2着から巻き返して1着に返り咲く。
ジャパンカップダートはミスタートウジンがスイフトセイダイを押さえ込んで2連覇を阻止した。
2歳路線の朝日杯フューチュリティSは地味な血統であるミホノブルボンが栗東トレセンの坂路の申し子と言われる位、調教の積み重ねで勝利。
阪神ジュべナイルフィリーズは持ち込み馬であるニシノフラワーが新馬戦から4連勝を飾ってしまう。
牡馬牝馬共に4連勝して2歳G�気鮴�覇するのは、今後もなかなか見られない事かもしれない。
来年のクラシックはミホノブルボンとニシノフラワーの1強で決まるのだろうか?
それとも、年明けデビュー組みに実力馬が現れるのかもしれない。
最後に古馬戦はメジロマックイーンが来年も現役続行となるので、トウカイテイオーは挑戦者としてぶつかる事になるだろう。
と、競馬雑誌には来年のレースについて語られており、その中には小さな記事だがウインドバレーの名もあった事を記しておく。
今年全ての競馬は終わり、秋子は家計簿兼成績表のノートをパタリと閉じる。
そのノートにはストームブレイカーが未勝利戦で勝利した事が書かれており、これで2戦1勝になった訳だ。
距離とコースは阪神芝1600mなのでマイル前後から中距離で活躍したサクラユタカオーの影響だろう。
サンシャインレディは中京芝1200mに出走したのだが、惜しくも届かず3着に敗れている。
そして、ウインドバレーの全日本2歳優駿は流石に全国の強豪を相手にはまだまだ敵わない状況だった。
そのため結果は3番人気で5着と、来年には見所がありそうなので秋子は期待している事だろう。
「んと、これで今年は10勝と……去年よりも1勝多いわね」
「それに重賞制覇があるから、躍進したんじゃない?」
名雪は閉じていた家計簿兼成績表を見開き、隅々から見渡している。
重賞制覇した事で次の目標に進める事になったので、秋子は新たなページを開き、上部に文字を書き込んでいく。
“中央・地方に問わずにG�祇�覇”
ニコリと秋子は小悪魔的に微笑みながら、名雪の顔を見ると引き攣った表情になっている程、難易度が高いのだろう。
「一気に厳しくなったけど、目標達成にはどれくらい掛かるのかな?」
「そうね……下手すると、名雪が後を受け継ぐまで不可能じゃないかしら」
さらり、と秋子は述べるが名雪はこめかみを押さえて、自身の苦労を考えた様で深く嘆息を吐いた。
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この話で出た簡潔競馬用語
注1:プレクラスニー……斜行したメジロマックイーンに代わり優勝した天皇賞・秋の勝ち馬。
注2:ゴールデンフェザント……イギリス→フランス→アメリカと転厩が多く、その中でアーリントンミリオンを制覇。
注3:リンデンリリー……典型的な夏の上がり馬で実際にはエリザベス女王杯を制覇している。
注4:ミスタートウジン……実際には重賞制覇も無くG�犠,舛癸韻弔睫気ぁ�
注5:ミホノブルボン……坂路調教の申し子で、1日3本近く坂路で鍛え上げられた。
注6:ニシノフラワー……この時点までにG�窟�G�侠�G�気肇好謄奪廛▲奪廚靴鴇〕�した。