白毛馬が誕生してから1週間。

     ある程度の競馬新聞とスポーツ新聞に取り上げられる程の人気が出てしまったが、競走馬なのでレース結果の方が実績として必要。

     外見で評価されても走るとは限らないので、1歳時に行われるイベントのグッドルッキングホース賞を取ってもあまり喜べないだろう。

     実際にこの賞を取った馬が重賞で結果を出す馬は少なく、むしろファンに愛されて誘導馬になったりする事が多い。

     それよりも1勝でもして評価をしてもらった方が、牧場関係者としては最も喜ばしい事。

     ようやく、騒動から開放されたKanonファームは、白毛馬の次に産まれたフラワーロックの仔を見る余裕が出てきた。

     因みに産まれた仔馬の毛色は白毛馬と対称的な漆黒と言える青毛であり、父であるキンググローリアスの毛色をより濃く影響したようだ。

     性別も対称で産まれており、青毛馬が牡馬で白毛馬が牝馬となっている。

     2頭が同時に出走するとライバル物語の様に目立つだろうが、同じ生産牧場ではなりえない関係だろう。

 

    「これで来月には種付けが行えますね」
    「ああ、初の高額種牡馬であるサンデーサイレンスが種付け出来るしな」

 

     フラワーロックを除く2頭の配合相手は既に決定しており、それぞれ以下の予定。

     ファントム×サンデーサイレンス。

     クイーンキラ×アスワン。

     フラワーロックだけは海外馬なので、良質の血統を持つ種牡馬と種付けしたいのだが、まだまだ日本競馬には超が付く良血馬が輸入されにくい状況。

     サンデーサイレンスも成績面だけなら、超1流馬だが血統面では2流のレッテルが貼られているのだから。

     そういった種牡馬が多いので、世界の競馬で太刀打ち出来ない状況が続いているのでまだまだ世界の壁は果てしなく高い。

 

    「サンデーサイレンスの産駒は走ると思うか?」
    「気性が勝っている馬が多く産まれて惨敗するか、その気性を武器にG�気鮠〕�する極端なタイプだと思います」

 

     なるほど、と秋名は納得してから、灰皿に置いてあった煙草を口に運び、紫煙を吐き出す。

     それから、2人はフラワーロックの配合を考えるためにちょっとしたティータイムを含めた会議が行われた。

 

 

     本日の競馬はルリイロノホウセキとミストケープが出走。

     ルリイロノホウセキは福島芝1200mで行われる雪うさぎ賞に、ミストケープは阪神芝2000mで行われる未勝利戦。

     ルリイロノホウセキのレースは500万下特別であり、新馬戦以来の距離なので、どのような影響が出るか不明。

     因みに現在の人気は単勝1番人気となっており、勝利したのは新馬戦以来だが安定した成績だからだろう。

     そして、ミストケープは4番人気と前走よりも人気が下がっている状況。

     小倉芝2000mで3着になったのが今一つ評価されていないようで、これはファンが決める事なのでどうにもならない。

 

    「まぁ、人気よりも結果が欲しいですね」

 

     秋名はTV画面を直視したまま秋子の言葉に反応して頷くのみだったが、キチンと伝わっている事が分かる。

     そして、阪神芝2000m未勝利戦からレースが始まる。

     数分後。

     道中は良い手応えで反応していた様に見受けられたが、直線では伸びが悪くなってしまい6着と惨敗。

     騎手が首を傾げてしまう事態だったようなので、実際には勝ち負け出来る状況だったのだろう。

     がっくり、と言う擬音が聞こえてきそうな程、秋子と秋名は同じタイミングで肩を落としてしまってしまう。

     ルリイロノホウセキが雪うさぎ賞に出走するまで、この空気が重い状況をリビングを包み込んでしまった。

     そして、雪うさぎ賞のスタートが切られる時刻になる。

     ルリイロノホウセキは大外枠の8枠12番からのスタートであり、小回りの福島競馬場では厳しい。

     ルリイロノホウセキはスッと一旦だけ、先行してから位置取りを少しずつ      下げていつものポジション――7番手辺りをキープ。

     その際に、外側から内側に移動する事を行動してコーナーで大外を回らなくなる必要がなくなった。

     残り800m。

     既に3コーナーを回る直前になって、先頭を走っている逃げ馬は2番手以降に3馬身程度の差を付けて軽快に逃げている。

     福島競馬場の直線は292mしかないので、後方に位置していた馬が急激にペースを上げて目まぐるしく位置取りが変化。

     そして、4コーナーから直線に入るまでに一気に逃げ馬との差が縮まる。

     逃げ馬は粘っているが、直線に入ってから50m辺りを走った所で行き脚が鈍ってきていた。

     ここで5番手辺りに浮上したルリイロノホウセキが仕掛けるが、後方にいた馬を遮る様に仕掛けてしまう。

     前が意外と粘った挙句に、後方の馬にちょろっと交わされた所がゴールだったが、電光掲示板には確定を示す“確”ではなく審議の“審”が表示。

     ルリイロノホウセキが直線での後方馬を遮る様に走った事に関する事が問題の一端だったようだ。

     そのため、ゴール後には掲示板には入着――5着にはなったのだが、進路妨害によって7着と降着。

 

 

     戻る     ← →

 

     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特になし。