サイレントアサシン、エアフリーダム、エレメントアローがそれぞれ勝利した事でKanonファーム内での新記録を達成した。

     それは1週間で3勝した事も含めて、勝利したレースはどれも特別戦である事は初めての出来事。

     今まではエレメントアローとエアフリーダムの同日勝利だけで、それに1勝が加わった新記録となる。

     これはある意味、名雪が骨折した事を馬が感知して激走したのかも知れないが、その真意は不明。

     実際に死亡した種牡馬の産駒の仔がその週に重賞を勝利したりするのは、競馬では良くある事例として、馬券が売れたりする。

     今回の激走も名雪が骨折したと言う作用が働いて、勝利したのかもしれない。

     秋子はこの事については偶然の産物だと思っている節があるようで、ロマンイズムはあまり持ち合わせていない事が伺える。

     ある程度のロマンイズムはあるが、このように何かしらの作用が働いての勝利と言われるのが駄目なのだろう。

 

    「これは名雪ちゃんが骨折したからだろうな」

 

     逆に秋名は性格に似合わず、ロマンイズムを好む傾向のようでこの点は経営者の秋子と秘書と言える秋名との立場の違いも現れているだろう。

     秋名の発言に秋子は端麗な眉を八の字にひそめつつ、ジッと秋名を見るが当の本人は気にした素振りを見せない。

 

    「この勝利で2頭がOPクラス、1頭が1600万下か」
    「そのおかげでローテーションの選択が厳しくなりました」

 

     上位クラスになれた事は喜ばしい事実だが、その分勝ち難いのでレベルが足りない馬には昇格されると厳しい。

     実力がある馬ならば、トントン拍子に駆け上がっていくのでOPクラスは通過点に過ぎず、重賞クラスで勝ち負けとなる。

     その点から鑑みると、エアフリーダムとエレメントアローは1枚ほど落ちる位のほうが良い成績を出せるだろう。

 

    「およそですが、これで今月の賞金は3500万程ですね」

 

     日本競馬の賞金は馬主に80%、調教師が10%で騎手と担当厩務員がそれぞれ5%ずつと決まっている。

     なので、馬主の取り分が非常に多いのが特徴的なのが日本競馬である。

 

    「この賞金でサンデーサイレンス種付けしないか?」
    「……それもありですね」

 

     秋子の表情は一瞬だけ眉をしかめて、秋名に言われた事を検討するが理は適っている事を確認すると軽く頷く。

     シンジケートの余勢株を購入して種付けするならば、不受胎になっても      1回きりの種付けが可能になる。

     シンジケートの株だとシンジケートが引退しない限り、年間に所持している株の回数だけ種付け出来るが高額なのがデリメット。

 

    「種付け出来る繁殖牝馬は……クイーンキラとファントムですね」

 

     秋子は頭の中で血統表をサッと作り出して、種付け出来そうな繁殖牝馬をリストアップするが、その中にはフラワーロックの名がなかった。

     その理由は簡単な事であり、ヘイルトゥーリーズンの3×3を持つ事になってしまうので、その観点から省かれた。

 

    「ヘイルトゥーリーズンの3×3では厳しいか?」
    「ええ、体質面で非常に虚弱体質が産まれる可能性が高いですし」

 

     せめて3×4だったら12.75%なので安心なのですがね、と秋子は呟いた。

     そうなると選択はクイーンキラかファントムの二者択一しかない事になる。

     日本競馬の概念を覆したノーザンテーストを父に持つファントムか、或いは人気と実力を兼ねたハイセイコー産駒のクイーンキラ。

     どちらかに付ければ確実に走ると言う訳でもなく、走るかどうかも分からない馬を生産するのだから競馬は面白い。

     ギャンブルの側面とロマンの側面が合わさったのが競馬であり、誰もが果てしないG�気鯑世觧�に夢を見ている。

     その為には血統の事を調べて最良だと思う配合を探し出し、終わりの無い計算式に挑む様な物である。

     その計算式――血統を解いた者だけがG�気鯑世襪噺世辰討皺畍世任鰐気ぁ�

 

    「私としてはファントムに種付けした方が良いと思うがな」
    「わたしはクイーンキラの方が良いと思うんですけど」

 

     まったく逆の意見になり、このままでは決められないのでソファーに座って2人の会話を聞いていたと思われる名雪と祐一にも質問をしてみる。

     名雪は一時退院の為に帰って来ただけなので、まだまだ左腕には痛々しくギプスがはめられたまま。

     名雪は競馬雑誌から視線を秋子の方に移さずにジッと読んだまま口を開き、ファントムを選択する。

     祐一は暫し考えてから名雪と同じようにファントムを選択。

     この結果はファントムを選択したのは秋名、名雪、祐一の3人となったので種付け相手が決定した。

     クイーンキラとフラワーロックは後日となり、恐らく低価格の種牡馬を選択する事態になるだろう。

     何しろ、サンデーサイレンスの種付け料は800万近くするので、下手すると今年の総額種付け料は1000万近く必要になってしまうのだから。

 

    「種付けするまでに後1勝はして欲しいですね」

 

     秋子はボソリ、と一言のたまうと全員が首を縦に振って同意した。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特に無し。