名雪が左腕上腕部を骨折してしまった事で、Kanonファームは人手が厳しい状況に陥ってしまった。
「……と言う訳で、名雪は簡単な作業を行ってもらうわ」
両手骨折でもないし足の骨折でもないから、片腕が動くだけでも騎乗は出来ないが馬を曳く事は可能。
「まぁ、片手だからって動かさなかったら鈍っちゃうから良いよ」
名雪はあっさりと同意しつつ、秋子がお土産で持ってきたイチゴのショートケーキに手を伸ばす。
「それにしても……蹴られるとは思わなかったよ」
秋子は何処を蹴られたかまでは教えておらず、あまり良い思い出ではないので口を閉ざすのも当然だろう。
秋子は牧場作業の為に帰宅してから数分後、入れ替われるように香里と栞がお見舞いに来た。
「香里と栞ちゃん、来てくれたんだ」
眉をひそめつつ名雪が骨折した箇所をジッと見ているが、それほど重傷でない事が分かるとホッと溜息を吐く
「あ、名雪さん。これお見舞いの品物です」
栞は手に持っていた白い箱を寝台の上に置き、箱をゆっくり開けるとひんやりとした空気が漏れ出す。
「……これ、栞ちゃんが食べたいから持ってきた訳じゃないよね?」
香里は溜息を吐いて、箱の中からひんやりと冷えたバニラアイスを取り出すと名雪と栞の頬に押し付ける。
「ありがとね。香里、栞ちゃん」
名雪は2人に感謝の言葉を言いつつ、冷え切ったバニラアイスを口に運ぶ。
「……良く食べられるねぇ」
香里は寒さの為か半分くらいで残してしまい、残りの半分は栞に全部あげていた。
「もう、それくらいにしておきななさい」
香里は電光石火のような速さでサッと、栞の手元からバニラアイスを奪うと栞は非難がましい表情を浮かべてしまう。
「お姉ちゃん、横暴ですよっ!!」
香里は壁に掛かっている時計を眺めると、帰る支度を行い始める。
「文句はあたしに言うんじゃなく、真琴先生に言いなさい」
はぁ、と名雪は溜息を吐いてから、もう一度プリントを見てから盛大に項垂れた。
「んじゃあ、あたし達はそろそろ帰るわよ」
香里と栞が軽く手を振っているので名雪もそれに釣られて手を軽く手を振り、視界から消えるまで手を振っていた。
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この話で出た簡潔競馬用語
特に無し。