菊花賞は終わったが、あと6日後には天皇賞・秋が行われる。

     こうしてG�気�増えた事は良いが、毎週行われるのでG�気陵�難みが無くなるというファンの声もあった。

     今までは八大競走がG�気涼罎裡猫気世辰燭�、現在は障害レースを除いて、20のG�汽譟璽垢�ある。

     こうした弊害は完全なチャンピオンを決め難くなった事であった。

 

 

     閑話休題。

 

 

     祐一は今日も乗馬クラブに通っており、新たな趣味として見つけたのだろう。

     その表情は生き生きとした顔であった。

     毎日、夕方から1時間ほど楽しんで騎乗を続けている。

     ポニーなので、そんなに危険も無くサラブレッドより早くないので子供が乗っても平気であった。

     祐一が騎乗しているポニーは鹿毛と白の斑があり、たてがみは茶が混じった白である。

     優しげな表情で、祐一を乗せたままゆっくりと闊歩するポニー。

     祐一はポニーの動きに合わせて、振動によって身体を上下に移動させる。

     今は乗馬クラブ内にある、レース用のコースを回っているのだが、競走している訳ではないので闊歩で十分。

     因みにコースの一周距離はダート500mと小さいコースだと分かる。

     のんびりと祐一は見慣れた風景を見ながら、楽しんでいるが本人としてはそろそろ走らせて見たいのが本音だろう。

 

    「走らせたいな」
    「……走らすなよ」

 

     祐一は手綱を引いてポニーを停止させてから、秋名に本音を言ってみるが釘を刺される。

     秋名がコース脇から見張っているので、簡単には走らせる事は許してくれそうも無かった。

     一度、走らせたら酷く怒られたので、祐一の深い恐怖心を刻みついている。

     とはいえ、ポニーでは走らせても早くないので危険は無いはずだが、秋名の意図があるのだろう。

     毎回、騎乗する度にポニーは違うのが選ばれており、祐一は違うポニーに乗れるので喜んでいる。

     秋名は早いうちに、現在は祐一を乗せているのはポニーだが、馬の背中で歩きなどを覚えて貰いたいようだ。

     馬の歩き方は斜対歩といって左前−右後、右前−左後と対角線に脚を出して歩く。

     歩き方がギクシャクと心地無い馬も入れば、沈むような感覚で歩く馬もいる。

     騎手は騎乗した馬が歩いただけで、どれくらい走るとか何となく分かるらしい。

     歩き方、調教タイムが良くても、レースでは惨敗なんて当たり前だが。

 

    「まぁ、暫く歩かせる事で何かを掴んでくれ」

 

     無責任な励ましを送る秋名。

     煙草を咥えたい所だが、近くには吸殻捨てが無いので諦めている。

     基本的に牧場、乗馬クラブも禁煙なので、吸えないが。

 

 

     暫く、祐一の騎乗を柵にもたれ掛って眺めていると一組の母子がやって来た。

     母親の方は右手を骨折しているのか、包帯で吊っており痛々しい腕であっる。

     その母親は秋名を見つけると、骨折していない左手を振りながら近づいてくる。

     この辺りには相沢母子以外はいないので、別の人物に対して手を振っている訳では無い。

 

    「お久しぶりです、秋名さん」

 

     艶のある黒髪のセミロングが移り映えしており、明るい表情は同姓でも惹きつける笑顔。

 

    「ああ、久しぶりだな。音薙ジョッキー」

 

     祐馬さんの葬式以来ですね、と音薙 皐月は呟く。

     秋名は何も言わずに一箇所を見つめている。

     ジッ、と秋名が骨折している腕を見ているので、皐月は乾いた笑い声を搾り出す。

 

    「調教でやってしまったんですよ……全治2ヶ月くらいです」

 

     つまり、骨折をしたのでは調教とレースには乗れないので休暇と言えるだろう。

     騎手の場合、一般人と違い休暇は騎乗停止中か骨折時しかないので、ハードな仕事だと分かる。

 

    「そりゃあ、災難だな」
    「本当ですよ。騎乗馬が減らされないと良いんですけどね」

 

     湿っぽい会話を打破するべく、秋名は皐月の脚にしがみ付いている祐一と同年齢くらいの少女に眼を向ける。

     少女は皐月にそっくりな表情であり、瓜二つとまでは行かないが誰が見ても親子だと分かる。

 

    「その子は?」
    「ほら、挨拶は?」

 

     ぐぃ、と皐月は少女を自分の脚より前に押し出して、秋名に挨拶をさせる。

 

    「えっと……音薙 有希です」

 

     ペコリと小さいお辞儀をする。

     秋名は有希と同じ視線にしゃがみ込んで、挨拶をしてから頭を撫でてあげる。

     有希は恥ずかしそうに顔を赤くしたまま俯く。

 

    「ポニーに乗ってみる?」

 

     皐月は有希に聞いてみるが、暫く長考したあとゆっくりと首を横に振る。

     母親は馬が原因で骨折しているので、恐怖心があるのは確かだろう。

 

    「なんだ、乗らないのか?」

 

     声が聞こえたので有希はキョロキョロと視線を彷徨わせると、柵の向こうでは祐一がポニーを止めようとしながら有希を見ている。

 

    「だって……怖いんだもん」
    「そうか?」

 

     首を傾げつつ、祐一はポニーの首元を撫でるとポニーはさっきと違い、大人しげにピタリと立ち止まる。

 

    「見える物が増えて楽しいぞ」

 

     見える物とは、自分の視線が高くなって見える風景が広がる、と祐一は言いたいのだろう。

 

    「……お母さん、私も乗ってみたい」

 

     はいはい、と皐月は娘が乗りたがるのを分かっていたように中程度の肩掛けバッグから片手でヘルメットを取り出す。

     まだ、真新しいさが残る赤いヘルメットを有希の頭に被せる。

     サイズはぴったりだったらしく、有希は皐月の腕を引いて馬の元に向かって行った。

 

 

     戻る     ← →

 

     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特に無し。