年明け最初のレースが本日、中山競馬場と京都競馬場で行われる。
Kanonファームの出走馬はサウンドワールドが中山金杯に、サイクロンウェーヴが京都の寿ステークスに出走。
サイクロンウェーヴは今年で６歳――旧年齢だと既に７歳なので、能力の衰えが感じている頃。
なので、このレースで入着出来なかったら引退と言う事を秋子の意思で調教師に伝えている。
人気も１６頭中１５番人気と、とてもでは無いが勝率は限りなく低く０％と言い切っても良いくらい。
逆に中山金杯に出走するサウンドワールドの人気は１８頭中６番人気と、サイクロンウェーヴよりも良さげな状況。
圧倒的な人気馬は出走しておらず、競馬新聞の予想では混戦模様となっているお陰でオッズは８.５倍と悪くない数字。
因みに一番人気になっている馬は同期の牝馬であるユキノサンライズ。
クラシックの成績はサウンドワールドに近い物なので、秋子の見立てではそれ程の差が無いようでＴＶを見ている秋名も頷いていた。
「それよりも、新種牡馬はどうだった？」
「種付けしてみたい馬なら、サンデーサイレンスとジェイドロバリーでしたね」
内国産馬ではオグリキャップですが、と秋子は付け加えておく。
オグリキャップは１８億のシンジケートを組まれており、約４０株で分割されているので１株４５００万近く。
シンジケートの株は多く所持している程、発言力が強くなるのは株式会社と同じ概念である。
シンジケートを組んだ種牡馬が活躍しないと、ただの紙切れになってしまうので自牧場のかまど馬を付ける事が増える。
因みに、かまど馬とは活躍馬を出してくれる繁殖牝馬の事を指し、重賞を勝っていない牧場でも必ず１頭はいる。
生活を支えてくれるのは繁殖牝馬が産んだ仔が走る事なのだから。
「やはり、サンデーは高すぎるのか？」
「そう……ですね。８００万もするなら３００万で２頭、２００万で１頭の方が効率良いですし」
近年は輸入種牡馬の数が増えており、それに合わせるように種付け料も高騰している事が多い。
特にトニービン、ブライアンズタイムは初年度からサンデーサイレンスの種付け料には劣るが高額なのは変わりない。
因みに内国産馬はそれほど高額ではなく、オグリキャップを除くとせいぜい２００万前後が増加している。
昔に比べると内国産種牡馬の不遇は減ってきており、徐々に輸入種牡馬に対抗できる状況になってきたのだろう。
輸入種牡馬の産駒が種牡馬入りを果たせば、その種牡馬は内国産馬になるのでこうした状況も押し上げている。
「そうなると今年の予定はジェイドロバリーか？」
秋名は中山金杯が始まる前に最後の質問をし、秋子の表情は何とも言えない曖昧な顔になっていた。
さて、現在のサウンドワールドのオッズは８.１倍と先程よりも売れているが６番人気なのは変わりなし。
パドックでは休養明けが響いたのか、やや入れ込んでいたのだが本馬場入場の際にはキッチリと立て直していた。
発走時間になり、ゲート前に誘導されていく各馬。
サウンドワールドは奇数枠である４枠４番なので、偶数枠よりも先にゲート入りを果たす。
ゲート内では、ちゃかつきつつ前掻きを繰り返しているので、スタートが厳しい状況。
最後に８枠１２番の馬がゲート入りを完了させて、スタートが切られる。
やはりと言うべきか、サウンドワールドは出遅れてしまい最後方からのレース展開になってしまった。
距離２０００ｍのレースとは言え、中山競馬場の直線は中央競馬場では短い
方に分類される。
前方に位置する馬は３頭程だが、争って先頭に立つ馬が居ないので現在のペースは落ち着いて淡々と刻まれている。
最後方からでは厳しい位置取りなので、どこかで無理をしてペースを上げないとガクッと勝率が落ちるだろう。
電光掲示板に１０００ｍの通過タイムが表示され、そのタイムは――１:００.３。
このままだと、前方を走る馬が楽に勝利してしまうので中団に位置する差し馬達が騎手の呼吸に合わせて徐々に進出。
サウンドワールドも釣られて上がっていくが、最後方のままでなかなか位置取りが変化しない。
そして、３コーナーと４コーナーの中間でサウンドワールドは一気に進出して１２番から７番手まで上昇。
中団に位置していた馬群はサウンドワールドを横目に、それぞれの判断で上がる。
大外から上がっていくサウンドワールドに対して、中団に位置して馬は馬群を縫って行く。
残り２００ｍ。
中山名物の坂を最初に駆け上がっていくのはカリブソング――去年フェブラリーＳ馬。
サウンドワールドはマクッた付けをこの場で支払ってしまい、あまり伸びる事が無く、５着に敗れてしまう。
因みにサイクロンウェーヴの方は７着と微妙な結果になってしまった。
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この話で出た簡潔競馬用語
注１：ユキノサンライズ……Ｇ�靴離侫薀錙璽�ップ勝ちがあり、桜花賞２番人気にもなった事あり。