雪が降り続ける中、静内にある大手牧場では新種牡馬のお披露目会が行われていた。

     この新種牡馬展示会は写真だけでは馬体などが分かり難い事が、ある程度だが伝わりやすくなる。

     高い種付け料を払って失敗しない為の事前チェックとも言えるが、大手牧場からしたら如何に種付け数を増加させる為に開いたとも言える。

     勿論、秋子も牧場入り口で受け取ったパンフレットを片手に見学に来ていた。

     秋子は知り合いの牧場長や馬主に挨拶をそこそこに済ませると、ロープで覆われた柵の前部に位置する。

     手元にはビデオカメラを所持しており、口では伝えきれない事を補完する為に必須なので、殆どの牧場関係者が所持していた。

     数分後には大勢の牧場関係者が、ぞろぞろと柵の前に集まりだして来て、ようやく新種牡馬展示会が開始される。

     そして、1頭ずつ新種牡馬が担当スタッフに牽かれて、その場でクルクルと旋回させて、立ち止まらせて数分後に移動を繰り返す。

     この年に輸入された種牡馬の質は競走成績面だけで見ると、近年ではもっとも良いと言える位、過剰に輸入されている。

     潤沢な資金で経済面に影響が出てきた事と、ノーザンダンサー系の活躍により海外との垣根が縮まってきた事も関係。

     ジャパンカップが開催されるようになってからは、海外馬を身近で観る事が増えたので実力の差を埋めるために躍進してきた。

     その為、今年からの新種牡馬は輸入馬ラインナップとしてはかなり評価が高い。

     活躍するかは現状ではまったくの不明だが。

     まずはキャロルハウス――去年のトニービンと共通する事項があり、それは凱旋門賞優勝馬と言う事。

     一応、ジャパンカップにお披露目の意味を込めて来日しているのだが14着と、日本の芝が合わないなどの推測されている。

     続いてはジェイドロバリー、日本語に訳すると翡翠泥棒と言う意味を持つのは父ミスタープロスペクターが探鉱者なのでそれを因んだ馬名。

     フランスのG�気鮠〕�しているのだが7戦2勝と平凡な成績。

     ただ、早熟性のある部分は支持されており、おねむね評価は高いと言えるだろう。

     3頭目はフレンチグローリー。

     欧州名種牡馬サドラーズウェルズを父に持つG�鞠呂世�、キャロルハウスと同じ様に評価が定まらない。

     次の馬で輸入種牡馬の展示会は終わり、内国産馬になる予定なのだが、4頭目がなかなか会場に来ない。

     数分後、ようやく担当スタッフがリードを引っ張って会場に姿を現す。

     漆黒の馬体を輝かせて、一本の流星が青鹿毛に映りえる特徴的な形になっている。

     ギロリと三白眼で周囲を睨んでいるようで、常に暴走しそうな気性を持ち抱えていると言っても良いかもしれない。

     それくらい気性が勝っている種牡馬は珍しいが、躍動感は素晴らしい動きを見せ付けている。

     特に後ろ脚で立ち上がった後に、その勢いを利用して前脚着地後にすぐさま後ろ脚で蹴り上げてしまう。

     観客の牧場関係者はどよめきを抑えきれない様子で、その種牡馬の馬名をパンフレットで調べる。

     その種牡馬の馬名はサンデーサイレンス――静寂の日曜日という意味でアメリカの日曜日では教会で祈りを捧げる日である。

     秋子も圧倒されてしまい、漆黒の馬体を惚れ惚れとした表情でビデオカメラの事をすっかりと忘れて眺め続けていた。

 

 

     ただ懐疑的な声も現れており、現状では良質と平凡のどちらかに評価が二分されている。

     これの原因はアメリカの活躍馬と言う事が一番の一因だろう。

     日本では欧州馬を好む割合の方が多く、その理由は過去の活躍した種牡馬の大半は欧州で購入した馬が多いから。

     今と違い、海外競馬と言えば欧州の考えが多く浸透していた時代の影響が受け継がれていると言っても良い。

     当時の世界最高峰のレースと言えば凱旋門賞であるが、現在の様に距離、芝とダートの多様化が行われているのでは最高峰は決めにくい。

     各国の最高峰レースを決める方が最も決めやすいのが事実だろう。

     そして、もう一つの理由はダート馬であるサンデーサイレンスがどれ程の芝馬を輩出するかだ。

     ノーザンダンサー系であるノーザンテーストを輸入した人物が発掘した馬なので、その点は問題が無いのだろう。

 

    「付けてみたいですが、値段が高額過ぎますね」

 

     初年度の種付け料の予定は800万と示されており、この値段で種付けを実行してしまうと、1頭だけしか行えなくなるくらい高額。

     Kanonファームでは年間種付け料で使用するのは300万くらいまでであり、活躍してくれないと一気に赤字になりえる程。

 

    「まぁ、種付けするなら産駒デビュー前ですね」

 

     ポツリと、独り言を呟いてからもう一度、サンデーサイレンスの様子を思い浮かべてから内国産馬新種牡馬の展示所に向かっていった。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:キャロルハウス……凱旋門賞以外の実績はイタリアダービー2着など。
     注2:ジェイドロバリー……おじにヌレイフがいる良血馬。
     注3:サドラーズウェールズ……前年のリーディングサイアーであり、この時点ではここまでの活躍をするとは思われていなかった。
     注4:フレンチグローリー……一応、カナダのG�気鮠〕�しているアイルランド産駒。
     注5:サンデーサイレンス……アメリカクラシックの2冠馬であり、ライバルにはイージーゴアがいた。