天皇賞・秋――日本競馬で最も歴史のあるG�気任△蝓⊃�多くの名馬が優勝したレース。

     過去には皇室御賞典が前身となっていて、第88回――1983年までは3200mで行われていた。

     その理由は欧州の長距離レース――ゴールドカップを模範として長距離戦こそが最強馬を生み出す近道とされていた。

     だが、現在では長距離戦よりも中距離からクラシックディスタンスの方が最強馬の争いが過熱しやすい状況。

     世界中でその流れは逆らえずに長距離戦などが廃止されていく中、天皇賞・秋は距離短縮で天皇賞・春と区別を作り出した。

     また、当時は天皇賞こそが8大競走で一番格上のレースだったので春・秋のどちらかを制すると2度と出走できない仕組み。

     これはどちらかを制した馬が敗北すると、天皇賞の威厳を下げてしまうから競馬協会が採った手段である。

     因みに1981年から春・秋どちらかを制した馬も出走出来る様になったが両レース制覇は現在まで2頭しか達成していない記録。

     1頭は1988年の春・秋を制したタマモクロスであり、栄光なる1頭目の達成馬。

     もう1頭は去年の天皇賞・秋から今年の春を制したスーパークリークがこれに該当する。

     さて、今年はどの馬が馬主に天皇盾を授けるのだろうか。

     競馬場に置かれているG�技�の特別レーシングプログラムにはその様になっており、誰かが捨てたと思われるそれは風によってページが捲れていく。

     既に踏まれた跡が残っているので誰も拾わない理由だろう。

 

 

     秋子は久しぶりに競馬場に赴いたのだが、これだけ盛り上がっている時――しかも、G�祇錣�行われる前なのに多数の人垣が見える。

     馬主や調教師に挨拶を交わしつつ軽く雑談に応じているが、やはりと言うべきか秋子の名を知っている馬主は少ない。

     名刺交換を行っているが、大手の馬主などと挨拶をするのは気後れがしてしまうようでなかなか近づけないようだ。

     こういう場所でそれなりのパイプを所有しておけば、馬を購入してくれる馬主との交流が出来る可能性がある。

     秋子は身に着けている純白のストールを肩に掛けなおして、軽く溜息を吐いた。

     因みに秋子の出で立ちは黒のレザージャケットを羽織っており、その下には白く薄着のハイネックのセーター。

     薄茶色のフレアースカートに膝下まである黒のブーツ、と色合いが落ち着いた服装の組み合わせ。

     それに純白のストールがアクセサリとして利用されており、整った風貌を醸し出している。

     まだまだ天皇賞・秋のパドックが始まるまで時間がタップリ残っているので、秋子はもう一度挨拶に向かって行く。

 

 

     同時刻――Kanonファーム。

     東京競馬場に行けなかった3人組――秋名、名雪と祐一は壁に掛かっている時計を気にしながら厩舎作業を行っていた。

     秋子と違い、3人の手際はそれ程良くないので余計に時間が掛かってしまう行動が多い。

 

    「時間は大丈夫かなぁ?」
    「ギリギリ、パドックまでに終わらせないとな」

 

     秋名と名雪はデッキブラシで通路を擦りながら、お互いに頷いて掃除スピードを早める。

     因みに祐一は最も重労働である水桶に大量の水を汲んで、各馬の馬房に吊るすのが仕事。

     焦燥感があるのか慌てて作業を進めているので、逆に手際が悪くなっている。

     荷物を積んでいた荷車から飼い葉桶と水桶が崩れて、大音響を響かせるなどの問題があったが作業は終了した。

     その時の時間は――長針と短針が3に合わさって同じ場所を指しており15時15分前後だと分かる。

 

    「あー、パドック終わっちゃったよ」

 

     ガッカリと肩を落とした名雪は溜息を吐きつつ、家に戻って行く。

     秋名と祐一も同じ様に溜息を吐いてから名雪の後を追いつつ、一緒に向かって行った。

 

 

     リビングにはTVの電源を点けっ放しだったのか、音声が玄関までに流れてくる。

     秋名は眉間に皺を寄せつつ右手で眉間を押さえて、TVの電源を消し忘れていた事を失念したようだ。

 

    「……しまった。すっかりと忘れていたようだ」

 

     慌ただしい日だったので昼食時にTVを点けていた以来、そのままにしまっていた。

     ただ、TV番組は競馬番組が放送されているチャンネルにセットされているので、ある意味手間は省けている。

     そして、タイミング良く本馬場入場が始まっており、3人はTVの前で釘付け状態になっていた。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特になし。