サイレントアサシンが低評価を覆す激走で単勝10万以上の高配当万馬券が世に出た。
このレース――いや、万馬券が出たからか競馬新聞では低評価を覆しての大激走など詳細が多く書かれている。
勿論、サイレントアサシンを評価している雑誌もあるのだが基本的には万馬券の方が取り上げられている比率が高い。
次走でキッチリと勝ち上がれば評価はうなぎ上りだが、敗北するとただの一発屋の評価で終わってしまうだろう。
「まさか勝ち上がるとは思わなかったぞ」
「わたしもですよ。……良くても入着ぐらいだと思いましたが」
これだから競馬は面白いんだよな、と秋子に同意を求めると秋子もその点は同意しているようで深く頷いている。
これで500万下を卒業したサイレントアサシンだが、次の出走馬は今年デビューの2歳牝馬2頭である。
父がビゼンニシキであるルリイロホウセキは、マイル前後での活躍と早熟性がありそうな血統面である。
そして、フランスダービーの優勝馬――ムクターを父に持つミストケープは中距離からクラシックディスタンスでの活躍を期待。
どちらの方が現在の競馬に合っているかは一目瞭然だが、どれだけスピード競馬になってもステイヤー血統は意外な真価を発揮する事がある。
牝馬なら、繁殖に上がった時にスピードタイプの種牡馬と配合して短所のスピードを伸ばす事が可能なのだから。
「ミストケープの方がデビューは遅いんだよな?」
「ええ、この時期にはまだマイル前後が多いので冬開催の頃ですね」
1800m戦なら、いくつか開催されているのだが調教師の判断では2000m前後の方が良いと伝言が伝わっている。
ふむ、と秋名は納得したようで手元に置いてある煙草を一本取り出してから火を点ける。
「なら、ミストケープの方がデビューは早いか」
紫煙を吐き出しながら、秋子に尋ねるが寸分に返ってきた答えは秋名が期待した物かどうかは分からないが、次のような答えが。
「ええ、そうですが……何か問題でもありますか?」
「別に問題は無いが、どれくらい走るかが検討つかなくてな」
うちの生産馬のデビュー戦成績はあまり良くないからな、と秋名は付け足して意味を伝える。
秋子は理解したのか、コクコクと小さく頷いてから頬に手を当てながら溜息を吐いた。
秋子がオーナーになってから7頭のサラブレットが生産されているが、未だに新馬戦勝ち馬はサイレントアサシンしかいない。
秋子が溜息を吐いた理由はこの事であり、色々と考えて行動しているのだが結果に結び付かない。
飼い葉の配合を変更したり、夜間放牧や曳き運動量増加が現在実行中の行動。
「もうちょっと、新馬戦で勝ってくれると良いんですが……」
「夜間放牧もまだまだ如実に効果が現れないからな」
お互いに溜息を吐いてから、秋子は壁に掛かっているシンプルな時計を見上げる。
時刻は15時を少し過ぎた辺りであり、そろそろ休憩タイムを終了させて放牧地で作業を行う頃だった。
秋名と秋子は軽く背伸びしつつ、肩を回しながら放牧地に向かって行った。
本日は一挙に4頭の生産馬が出走する事になっている。
サイクロンウェーヴ、サウンドワールド、エレメントアローとエアフリーダムが1600万下に出走。
全頭揃って、中山芝1800mで行われるニューマーケットカップに。
ニューマーケットカップはイギリスにある競馬場に1つであり、くの字に一本の線を組み合わせたようなコースが特徴。
大半のレースが直線で行われる壮観さは類見ないコースで、イギリス貴族などが大レース時に一堂すると言われている。
閑話休題。
このニューマーケットカップはその競馬場と提携して作られたレース名であり、他にはG�靴離┘廛愁爍辰覆匹汎盈燹�
さて、それぞれの人気は以下の通り。
エレメントアロー……4番人気。
サウンドワールド……6番人気。
エアフリーダム……9番人気。
サイクロンウェーヴ……11番人気。
エアフリーダムは距離不足の不安から、サイクロンウェーヴは前2走の走りがパッとしない事から。
全頭揃って1着になれば、と誰かが願うだろうがいくらなんでも、その可能性は極めて低い。
そして、このレースの結果はサウンドワールドが先行差し切りで勝利して、他の3頭は休養明けが響いたのか見る所無しだった。
因みにエレメントアロー6着、サイクロンウェーヴ9着、エアフリーダムが12着と人気を上回ったのはサイクロンウェーヴのみだった。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。