サウンドワールドが皐月賞の出走権利を得たが、別件で深刻な問題が浮上してきた。

     それは今年の勝利数がサウンドワールドの寒竹賞だけ、とまだ1勝しかしていない事実。

     スプリングS3着とアストラルが出走した中山記念での3着が、赤字にならない程度の支えになっていた。

     既に4月が近づいている時期なのに、このペースは去年の4月までの2勝に比べると遅いと言えるだろう。

     その為、4月にはサウンドワールドを除いて4頭の馬が出走する事が決定している。

     勝利出来るかは不明だが、今年の出走数が極端に少ない傾向なのでその点を補う必要がある。

     来月に1勝して成績を上乗せ出来れば上出来、と言えるかもしれないが勝てないと非常に厳しい状態になってしまう。

 

    「所で……来月の皐月賞は見に行くのか?」

 

     そう、来月にはサウンドワールドが晴れの舞台――皐月賞に出走するので馬主として見に行く事イベントもある。

 

    「勿論、見に行く予定はありますよ」

 

     全員で見に行きたい所だが、牧場の事を考えると誰か1人はKanonファームで牧場作業を行わなくてはならない。

     名雪と祐一は連れて行く事は確定したとして、残りの1人は秋子か秋名でチケットの争奪。

     サウンドワールドが皐月賞の出走権利を得たように、秋子と秋名は観戦権利を得るために勝負を行う。

     方法は手早く、簡単に勝敗が決まるジャンケン3本勝負、と秋子が案を出すと秋名は神妙に頷き了承となった。

     そして、観戦権利を巡る真剣勝負開始。

     最初の合図を2人同時に言い、グーの手から一気に振りかぶられて、その場に出された手はチョキとグー。

     手を辿って見ると、秋子の腕は悔しさから小刻みに震えており、秋名は口端を釣り上げてニヤニヤと笑っている。

 

    「さて、2戦目だ」

 

     最初に勝利した事で秋名は余裕が生まれ、いつもの口調で秋子を煽った。

     そして、2戦目は秋子がパーで勝利して振り出しに戻り、秋子の表情も余裕が出てくる。

     3戦目。

     チョキとパーで先程と同じ様に秋名が先手を取り、これで2−1なので秋子には後が無い。

     そして、権利を得た勝利者は――秋名だった。

     ニヤリと口端を釣り上げてから高圧的に笑い、ガッツポーズを見せ付ける。

 

    「んじゃあ、約束通り私が皐月賞を観戦だな」
    「……ええ、その代わりダービーは譲ってくださいよ?」

 

     出走出来たらと言う条件付きだがな、と厳しい条件があるにも関わらず秋子は頷いた。

 

 

     ジャンケン勝負が終わった事で次の話し合いに移行する。

     それは毎年、頭を悩ますイベント――種付け種牡馬を選択して決定する事を。

     新種牡馬はミスタープロスペクターを父に持つエブロスが候補に決まったのかメモ用紙にはデカデカと馬名が書かれている。

     成績は大した事無いが種付け料の価格が100万と安価なのが決め手になったようだ。

     種付け相手はファントム――ノーザンテーストを父に持ち、母父はアローエクスプレス、即ちアウトブリード配合である。

     クイーンキラの種付け相手は名雪と祐一に任せているので、どの様な配合が飛び出てくるかは不明。

     なので、秋子と秋名はフラワーロックの配合に専念する。

 

    「リアルシャダイはどうだ?」
    「シャダイカグラを輩出したから、種付け料が高くなっていますね」

 

     次に挙げた候補はブライアンズタイムであり、思っていたより初年度の種付け料は安い。

     ただ、500万が安いかどうかは判断し難い価格だろう。

     暫らく、秋子が考えているうちにドタドタと廊下を足音で響かせて、2階から名雪と祐一が降りてきた。

 

    「お母さん、決定したよ」
    「ノーザンテーストを父に持つアスワンで」

 

     アスワンはセントライト記念馬のメジロアルダンを輩出しており種付け料は150万。

     自身も青葉賞と京成杯を勝利しているのがメリットと言える。

     名雪はテーブルに置かれているメモにアスワン×クイーンキラと書いて祐一と一緒に放牧地に向かった。

 

    「んー、キンググローリアスはどうですか?」

 

     9戦8勝も勝利しており、父はミスタープロスペクター系。

     価格はブライアンズタイムに劣るが、馬体はこちらの方が良く見える。

     決定だな、と秋名は頷き、秋子はメモ用紙にキンググローリアスの馬名を記する。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:リアルシャダイ……ロベルトを父に持つステイヤー。
       注2:アスワン……実際は青葉賞ではなく、NHK杯を勝利している。
     注3:キンググローリアス……父はミスタープロスペクター系のニーヴァス。