サイレントアサシンが骨折による長期離脱で、出走可能馬が1頭減った状態で半年過ごす事になる。

     出走可能な馬はサイクロンウェーブ、エアフリーダム、エレメントアローとサウンドワールド。

     この4頭に頼るしか無く、今年デビュー予定の2歳馬がどれだけ走るかが分からない事も肩に圧し掛かってくる。

 

    「本当に……参りましたね」
    「今からだと復帰は8〜9月辺りか……」

 

     秋子は頭を抱え込むような格好でソファーに座り込んでおり、溜息を吐いたりしているが事態は好転しない。

     慰めるために秋子の肩をポンポンと軽く、秋名は真横から叩いており秋子は委ねる様に秋名の身体に寄りかかっていた。

     約半年の治療が必要だが、運が良ければもうちょっと早めに完治する事があるが、運が悪ければ逆もある。

     どうするんだ? と秋名は秋子に問うが簡単に答えは出せないのか、沈黙が暫し続いているのみだった。

     数分か、数秒或いは数時間経ったのだろうか、それくらい2人の間には時の流れが不適格な物になっていた。

     ようやく、秋子が口にした言葉は引退ではなく休養を、とハッキリした口答えでサイレントアサシンの休養が決定事項になる。

     頑張ってもらうしか無いな、と当てにならないような励まし方をする秋名だが、気楽に考えるしか無かった。

 

    「そう……ですね、頑張ってもらいましょう」

 

     うん、と秋子は先程よりも力強い――いつも通りの眼付きに戻っており、力強く頷く。

     秋子は受話器を取り、サイレントアサシンが所属している厩舎に電話を掛けて育成牧場に放牧する事を頼むとあっさりと決定。

     こうして、サイレントアサシンは長期離脱となってしまったが他の馬に頑張ってもらう事になった。

     家に戻って来た名雪と祐一にこの事を伝えると、一瞬だけ痛の表情を浮かべたが何事も無かったように仕事に向かう。

 

    「子供の方が立ち直るのは早いですね」
    「そうだな」

 

     はふぅ、と秋子は自分自身の落ち込み具合が何だったのか呆れつつ、溜息を吐いた。

 

 

     今週の出走馬はエアフリーダムとエレメントアローが一挙に出走する。

     お互いに現条件は1000万下となっており、秋子としては早めに卒業して昇格して貰いたい所。

     出走するレース名は京都芝1600mで行われる木津川特別と東京芝2400mの箱根特別。

     それぞれの詳細はエアフリーダムが木津川特別に、エレメントアローが箱根特別になっている。

     エアフリーダムにとっては前走の2000mでの意外な敗戦となり、今回は適材適所と言える1600m戦。

     エレメントアローは1800m戦は勝利しているが、前走は距離短縮してみたがピリッとしなかったので、距離延長を。

     距離の限界がどの辺までか見極める必要があるので、敢えて2400m戦に出走させたと言った方が正しい。

     まずは、エアフリーダムのレース振りを見てみよう。

     向こう正面からのスタートで外回りのコースとなっており、やや内枠寄り4枠4番からの出走。

     人気は15頭中6番人気とそれなりになっているが、オッズは15.3倍と上位人気との差が激しい。

     スタートが切られると、いつもの様に後方4番手辺りをキープして、最後の直線に賭ける追い込みである。

     逃げ馬が2頭いるのでレース展開は縦長で、追い込み時に馬群を捌くのに苦労するかもしれない。

     大外に持ち出すと、脚を使い切って差し切れないかもしれないので、どちらを選んでも茨の道だろう。

     騎手が選んだのは――外に持ち出してから差し切る方を選択。

     京都競馬場の名物である下り坂は既に目の前で、牙を剥き出しにして各馬のスタミナを奪うように待ち受けている。

     エアフリーダムは下り坂では脚を溜めて、ゆっくりと下るセオリーを破り早仕掛けと言える位置から一気に進出。

     そして、直線では11番手から一気に5番手に伸し上がり射程圏を捉える。

     逃げ馬の2頭は少しずつ脚色の衰えを隠す事は出来ずに、下がり始めていた。

     好機とみた、3番手と4番手に位置していた馬の騎手が仕掛けて、一気に逃げ馬を抜き去ってしまう。

     エアフリーダムは逃げ馬のうち1頭を交わして4番手に浮上するが、後方にいる1番人気馬が追い上げてきた。

     残り100m。

     逃げ馬を完全に抜き去って、3番手になった所で逆にエアフリーダムの脚色は衰えて止まってしまう。

     騎手は鞭を入れるが、反応は鈍く1番人気の馬に抜き去られてしまった。

     結果は4着と人気より2つ上で、掲示板に乗っただけであった。

     因みにエレメントアローは距離が長すぎたのか、14頭中10着と見るところも無く敗れ去ってしまう。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特に無し。