まさかの同着に秋子と秋名は暫し口を情けなく、開けたまま固まっていたのはここだけの話。
とにかく同着は1年に1回あるか、無いかくらいの出現率で滅多に見られる物では無い。
特に日本競馬の写真判定は画像の引き伸ばし技術が高いので、鼻差1cm程の着差も見分けられる。
なので、秋子と秋名は勝敗の判断しか準備していなかったから、さすがに同着までは分からなかったのだろう。
因みに名雪と祐一はそれ程、驚愕の表情を浮かべる事無く、淡々と感想を述べていた事を記しておく。
「それにしても、1戦目で500万下を勝ち上がるとは思いませんでした」
「3戦目くらいで勝ち上がると思っていったが……評価を改めないとな」
ポリポリ、と恥ずかしそうに右手の人差し指で頬を掻きながら秋名は呟いていた。
これでOP馬になったので、これからはクラシックを目指すローテーションを選択する事になる。
皐月賞を目指すプランは2つ。
1つ目は本賞金を一定以上稼いで、収得賞金での出走ラインを目指す方法。
2つ目はクラシック直前に行われるトライアルレースで、特定の着順に入る条件。
細かく分類すると、弥生賞が3着まで、若葉Sが2着、スプリングSが3着となっている。
若葉SのみがOP戦だが、出走枠が他の2つより1つ少ないのがネックだろう。
そして、弥生賞とスプリングSはG�兇任△蝓⊇仭�馬のレベルは若葉Sより高くなってしまう。
この2つの手段が駄目なら、最後の手段は抽選と言う出走枠が完全に埋まりきっていない時に行われる方法がある。
こっちは確実に出走出来る訳では無く、くじ運で出走が決定するので抽選機を回して当たりを引くだけ。
回す人物――調教師か騎手の運が良くないと出走出来ないと言う事。
「さて、どっちを選びましょうか?」
「私はOP戦で賞金加算での出走だな」
秋名の答えを聞き終えると、今度はこの場に同席している名雪と祐一に聞いてみる。
んー、と名雪は親指を唇に当てながら考えており暫らくしてトライアルレースからと口に出す。
祐一も名雪と同じ考えらしく、スプリングSからと的確にレース名も出してステップレースからの明言をする。
「珍しい結果です……姉さんだけが収得賞金になるとは思いませんでした」
「お母さんもステップレースだったんだ」
ええ、と秋子は名雪の問いに頷く。
秋名は残念そうに軽く人差し指で頭を掻いているが、決定事項に文句は無いようだ。
ひとまず皐月賞に出れる様になれば良い、と秋名はその一言を吐露しただけであっさりとこの話し合いは決定した。
どのステップレースを使うかは調教師に任せると言う事にして、この会議の内容はサウンドワールドが何事も無ければそのままだろう。
会議が終わったのだが、続いてはサイレントアサシンとサイクロンウェーブが出走するのでレースを見る事になっている。
サイレントアサシンは前走の人気から今回出走500万下が正念場と言えるだろう。
サイクロンウェーブはセン馬後、初の出走なのでどのようなレース振りを見せるかが課題。
特にサイクロンウェーブの方はダート戦に初挑戦となるので、どこまで出来るかの疑問もある。
さて、まずはサイレントアサシンの方のレース振りを見てみると、前走の勝ちっぷりでかなりの人気はあった。
因みに出走レースは中山芝1200m。
だが、今回は人気――3番人気になったので、各馬から激しいマークに合ってしまい惨敗してしまった。
結果は14頭立ての10着。
続いてのサイクロンウェーブが出走するのは中山ダート1200mと、新馬戦以来の距離。
しかも初ダートなので、どこまでやれるかが問題もあるが、一番の問題は入れ込まない事。
スタートが切られると入れ込む事も無く、ポンと先頭に立つが無理をせずに3番手辺りに一旦下げられる。
砂を被らない位置を走っているので、今の所は入れ込む恐れは無い。
このまま、行けるならセン馬にした意味がキチンと証明されるので、勝ち負けは2の次になる。
――そして、結果は16頭立ての5着となったが入れ込まなかった事が秋子の中では一番嬉しい事柄だろう。
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この話で出た簡潔競馬用語
特に無し。