新たな年が訪れた。
チラチラと新雪が降り注ぐ中、牧場作業はいつもと変わらずに淡々と消化されていく。
競馬関係者には一年のサイクルは決まっており、新たな年が訪れてもやる事は何も変わらない。
牧場に新しい施設を置くか、競馬に革命が起きるような事態が無い限り、牧場関係者は馬を育成するだけ力を注いでいれば良い。
ただ、血統の流行を敏感に読みきれない所は、徐々に衰退していくのが定めと言えるだろう。
如何に赤字を出さずに流行の血統とブームが去った血統を入れ替えて、育成を成功させるのが良質の中小牧場。
勿論、全ての繁殖牝馬を流行の血統に取り替えるのは愚の骨頂なので、半分程はマイナー血統が入っている方が良い。
何故なら、母系の血統が流行と言う事は父系も似たような血統構造を持ち合わせている事が多い。
なので、全取り替えしてしまうと血統の行き詰まりを起こしてしまう。
その事を考えると、Kanonファームは良い時期にフラワーロックを購入したと言える。
さて、現在Kanonファームにいる繁殖牝馬はフラワーロック、ファントムとクイーンキラの3頭。
血統から見ると、クイーンキラはダート馬なので長所を伸ばす配合にするか話し合いが行われている。
去年、名雪と祐一が決めたグランドオペラ×クイーンキラはどちらかと言うと芝馬の能力を引き出すような感じ。
「今年も2人に考えてもらうか?」
「うーん、時間があるなら考えてもらいます」
新年度の真新しい種牡馬辞典をのページをゆっくりと眺めながら、2人は血統を考えている。
去年はトニービンと言う凱旋門賞の勝ち馬が輸入されたのが話題になったが、今年は目ぼしい種牡馬がいない。
サンシャインフォーエヴァーを輸入しようと交渉したが、不可能だったので母の名が違うだけで同配合のブライアンズタイムが代理輸入。
つまり、母がブライアンズタイムの全姉なので、まったく血統は変わり無いと言える。
だが、代理で購入したような物なので馬産地の評価は馬体がゴツゴツし過ぎているの一言。
秋子の評価は大きく心が揺れ動く程ではないが、それなりにブライアンズタイムを種付けしたいと思っているようだ。
その為、新種牡馬辞典のブライアンズタイムが載っているページを何度も捲っている。
一番のネックは種付け料で初年度は500万と高額な事であり、秋子は何度も迷っていた。
「3年後の産駒デビュー前に付けたらどうだ?」
「確かに、その頃は値段は下がりますが……」
それに評価は今1つ低いだろう、と秋名の追い討ちで秋子は眉間にしわを寄せるが助言を受け入れて、ページを捲りだす。
他にはキンググローリアスなどが輸入種牡馬の一覧に表示されている。
内国産馬の新種牡馬もいるのだが、評価が良さげなのはやはりG�犠,舛里△襯侫譽奪轡絅椒ぅ后�
G�毅馨,良床舛歪�良い程度だが、マイルでG�毅馨,蝋眤�競馬にシフト化
している馬場に合う事だろう。
他には去年のダービー馬ウィナーズサークルや菊花賞馬のバンブービギンが今年から種牡馬入りを果たしている。
「取り合えず、候補はこれくらいですね」
秋子は新種牡馬辞典のページの端をある程度だけ折って、パタンと音を立てて辞典を閉じた。
秋子は種付け種牡馬の予定が決まると、手元に置いてあるホットコーヒーに手を伸ばす。
やや、冷え切ったそれは秋子の眉間が八の字になってしまう程の味――酸味がキツイ状態だったようだ。
「今年は重賞勝てるでしょうか?」
「1回でも良いから、勝ちたいな」
果てしない壁を想像しながら、重賞制覇した事を思い浮かべる2人。
期待出来そうな馬はサイレントアサシンとサウンドワールドの2頭だろうが
秋名はサウンドワールドの評価は芦毛の事が引きずっている。
「芦毛は一流馬以外、成功が低いからな」
それなりに評価は改めているが、相変わらず嫌いな毛色なのは変わらないようだ。
「まぁ、サウンドワールドが重賞勝ったら完全に評価変わるな」
「あら、じゃあ勝って貰わないと困りますね」
お互いに笑いながら、サウンドワールドに重賞制覇の願いを託してしまう。
それが、最も重賞制覇に近い道だと信じて。
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この話で出た簡潔競馬用語
注1:ブライアンズタイム……父ロベルトを持つフロリダダービー馬であり、3冠レースを走っている。
注2:サンシャインフォーエヴァー……母がブライアンズタイムの全姉で、父は一緒なので配合は同じと言っても良い。
注3:キンググローリアス……G�気肋,辰討�り、なかなかの実力を所持していた。