Kanonファームで重大な会議が行われており、その内容とはフラワーロックの仔馬をどうするかの議題であった。
名雪と祐一は朝になってから事実を知ったので、寝ぼけ眼で秋子から説明されたので脳が覚醒してから驚愕の表情を浮かべたのは当然。
だが、名雪と祐一は学校に行かなくてはならないので、この話は2人が帰ってきてから話す事になっている。
駄々を捏ねたので、無理矢理連れて行こうとしたが秋名が何かを言って説得したらしく、渋々と向かって行った。
秋子は何を吹き込んだか気になるのか、秋名に問い詰めるがはぐらかされてしまう。
「まぁ……後で分かるだろう。それよりこれからどうするんだ?」
仔馬にミルクを与える事と、厩舎掃除、繁殖牝馬を放牧etc、どれもやらなければならない事。
更に数週間〜数ヶ月もすれば、2頭の仔馬が出産される予定なので人手が足りなくなる可能性が高い。
「……確かに非常に厳しい事態ですね」
頭を抱えたくなる事態だが乗り越えて行かなければならないし、こんな事で牧場をたたむ気は起きない。
ふぅ、と秋子は嘆息を吐きつつ、パンパンと頬を両手で軽く叩き気合を入れる。
「ん、そろそろミルクを与える時間ですね」
ちらりと壁に掛かっている時計を見ると、前回与えた時間から3時間程度経っていた。
これの繰り返しなので、ミルクを飲まなくなるまで続け無くてはならず苦労の方が多い。
人の手で育ったサラブレットは大成するかと言われれば、有名な馬は多くいない。
代表的な馬と言えば、1976年の牝馬2冠馬のテイタニヤが桜花賞とオークスを勝っている。
秋子は生で観戦した訳ではないが、その時の様子を秋名に説明しようとするがミルクを与える時間が迫っていたので後回しに。
「まぁ……実例があるなら、うちでも何とかなる筈」
だと良いな、歯切れが悪い受け答えをしながら、秋名は厩舎に向かって行った。
さて、厩舎内にある馬房ではフラワーロックの仔馬がジッと佇んでおりミルクを待ち望んでいるのかもしれない。
ただ、その愛くるしいつぶらな瞳は純粋であり、意思の強さも垣間見える眼だと記しておく。
秋名が馬房の前に現れたのが分かると、扉の前に近づいていきミルクをせがむ為に首を上下に振る。
「はいはい……分かったから落ち着け」
ミルク作りを始める秋名だが、仔馬は早く飲みたいのか急かしている。
そして、完成。
600ccもミルクを入れた哺乳瓶は数分もしたら空っぽになり、次に与えるのがまた3時間後。
これを6ヶ月休み無く行うのは非常に困難であり、Kanonファームにいる4人だけでは厳しい。
「やっぱり、従業員が増えて欲しいぞ……」
はふぅ、と肩で嘆息を吐きながら秋名は哺乳瓶などを片付けてから、そのまま厩舎作業を開始する。
秋子は放牧地の掃除をしており、雪の下に積もっていた数少ない枯れ草を箒で掃いていた。
午後1時。
今度は秋子が交代でミルクを与える役目になっているので先程、秋名が行ったように同じ事を繰り返す。
家では秋名が料理を造っており、秋子が戻る頃には完成しているだろう。
哺乳瓶からミルクを吸っている音を立てている仔馬を秋子はジッと見つめて
おり、その表情は慈しみを感じる。
仔馬の方はミルクの方が気になっているので、秋子の視線には気付いていないようだ。
飲み終わると、もう一度仔馬はせがんでくるが、一定量以外は与える気は無いのでそこまで。
軽く鼻筋を撫でてから、秋子は家に戻って行く。
3時を少し過ぎた頃、名雪と祐一が一緒に帰ってきたので秋名は2人を呼び出す。
「2人にミルクを与える役を毎日やってもらいたいが、良いか?」
「ちょっと、姉さん。流石にそれは……」
毎日と言う事は学校行っている間以外は全てやれと言っているような物。
深夜も交互にミルクやりをやる事になるが、その点も含めて秋名は言っているのだろう。
「うーん、わたしは……良いよ」
暫く、考えていたが実にあっさりと名雪は承認して首を縦に振りながら頷いていた。
次に視線が集まったのは祐一であり、名雪と同じように頷くが不安そうな表情だった。
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この話で出た簡潔競馬用語
特に無し。