今年の春に行われたG�気亘槎診呂�件並み優勝をさらっていった。

     オークス優勝時が9番人気のトウカイローマンと天皇賞・春の優勝馬モンテファストが6番人気であったぐらいだ。

     安田記念優勝馬の二ホンピロウイナーは軽度の故障を発生したが、秋のスプリンターズSには間に合うようだ。

     皐月賞と秋子には忌まわしいレース、日本ダービーの勝ち馬シンボリルドルフは無敗のまま三冠達成かが話題であった。

     既に世間は祐馬の死など無かったように、次の競馬話題が持ち上がっていく。

     上半期最後のG�機宗淑�塚記念は前年三冠馬のミスターシービーの後塵を拝んでいたカツラギエースが逃げ切った。

     だが、宝塚記念にはミスターシービーは裂蹄で戦線離脱をしているので秋がカツラギエースの本番だろう。

     大井競馬の権威のあるG�機宗縦覯�賞はスズユウが地方馬代表として圧勝をした。

     中央馬も勿論、優勝を狙っていたがダートではまだまだ地方馬に追い付くのは先だろうと言われた。

     それくらい、スズユウの実力は違っていた。

     この勝利によって地方競馬の調教師、騎手と厩務員が鼻息を荒くして、地方競馬でも夢が見られるのが分かった。

     秋子もこのスズユウの勝利は自分の馬ではないが、素直に喜べるものだった。

     自分の現在所持馬は全て地方馬なのだから、もしかしたらという欲が出てきた。

     その事を考えてながら、秋子は小さく欠伸をしつつ2頭の牝馬達に朝飼いを与える前に足元の怪我がないかチェック。

     2頭とも怪我は無く、体調は良さそうに嘶いており、昨日の夕方与えた飼い葉はキチンと空になっていた。

     そして、朝飼いを与えると馬は一目散に飼い葉桶に頭を突っ込んで、独自の咀嚼音を響かせる。

     朝飼いが一段落したので放牧前に手入れによって汚れた馬体をブラッシングで磨く。

     放牧された牝馬は一斉に放牧地を駆け、そして徐々に走る速度を落として歩き出す。

     秋子はゆっくりとストレッチをしつつ空を眺め、既に太陽が顔を出しており、雲一つ無い青天が秋子の目に飛び込んできた。

 

    「今日はずっと晴天かしら」

 

     うーん、と背伸びをして糞尿で汚れている馬房掃除のために空っぽになった厩舎に向かう。

     いつもの様に掃除を終える頃に、家から朝食の匂いが漂ってきた。

     今日は和食ですね、と一人ごち朝食を家族全員で食べるべく、急いで掃除を終わらせ、馬房内は綺麗になった。

     

 

 

     ダイニングでは全員が座っており、あとは朝食を食べるだけの段階だが名雪はテーブルの僅かなスペースを枕化している。

     秋子は小さく微笑んで名雪の身体を揺すると、もぞもぞと身体を身動ぎする。

     もう一度、秋子はさっきより強めに身体を揺すると、名雪は目を擦りながらゆっくりと起きる。

     テーブルを枕代わりにしていたので、少し頬にテーブルの痕が付いていた。

     名雪は頬の状態に気付かないまま、秋子に挨拶。

 

    「おはよう名雪。それと鏡見た方が良いわよ」

 

     首を傾げつつ、名雪は言われた通りダイニングの壁に名雪が見える位置に 設置されている鏡を覗き込む。

     うー、と唸って眉を八の字にしたまま秋子達の方を向いて、全員の笑いを誘う。

     笑いが収まった所で名雪が椅子に座り、全員でいただきますと言って箸をつける。 

    

 

 

     朝食が終わると秋子は食後の休憩を挟んでから、厩舎に向かう。

     次は干していた寝藁をひっくり返す作業に移り、秋名は飼い葉桶と水桶を洗うがサイズが大きいので時間が掛かる。

     2頭分だけなのが幸いだが、もし繁殖牝馬の数が多かったら所有時間は倍近く掛かるのが予想できる。

     ふぅ、と息を吐いて額から流れ落ちる汗を拭う秋名。

     北海道の夏とはいえ、外で作業を行うと汗が湧き出てくるのは普通である。

     タオルを頭に巻いて、日射病にならないように気を遣いながら作業。

     暫く、作業を続けていると一台の黒い車がゆっくりと牧場の敷地に入ってきたと名雪が言いに来た。

     ぐいぐい、と秋子は引っ張られて外に行くと確かに一台の黒い車が止まっていた。

     運転手だけが蒸し暑そうな車内に残っておるが、文句を言わずに待っている事から見るとお抱え運転手だと秋子は分かった。

 

    「あの……どのような御用でしょうか?」

 

     放牧地を眺めている一人の男性のもとに近づく秋子。

     男性は秋子の声を聞いて振り返ると、挨拶をして懐から名刺を取り出して秋子も同じように常に常備している名刺を差し出す。

     頂いた名刺には倉田 隆道と書かれており後は電話番号とFAX番号があった。

     倉田と書かれた名刺を見るが、秋子は倉田の名前を聞いた事あるか思い出そうとするがどうやら記憶に無かったようだ。

 

    「失礼ですが、競馬関係者の方でしょうか?」
    「ええ……今年馬主になったばかりなので、挨拶巡りって言ったところです」

 

     あまり知られていませんけど、と隆道は苦笑気味に笑って。

 

    「わたしも父から引き継いだばかりなので、あまり知られていない方ですよ」

 

     お互いに苦笑をして、秋子はお茶でも飲んでいきませんかと家に招く。

     秋子にとって、馬主同士としての社交は必要な事なので招いたに過ぎなかった。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:トウカイローマン……トウカイテイオーの叔母にあたる牝馬。
        当初は本馬がルドルフと配合される予定だったが、引退が伸びたので トウカイナチュラルが代わりになった。
     注2:モンテファスト……兄にモンテプリンスがいる。
        本馬は病気によって睾丸が一つだけになっているが天皇賞春の勝ち馬。
     注3:カツラギエース……日本馬一番最初のジャパンカップ勝ち馬。 大逃げで2頭の三冠馬を出し抜いて勝った馬。
     注4:スズユウ……70戦も走った名馬であり、帝王賞の他には東京大賞典を勝っている