神戸新聞杯の結果は上位3頭――ダンスインザダーク、ロイヤルタッチとイシノサンデーが菊花賞の権利を得て、クラシック路線組がそのまま進む事に。
こうした結果になる事はトライアルレース毎に起こりえる事なので、悲観するほどではない。
だが、イシノサンデーは菊花賞の距離が長すぎる不安――母系がアメリカンのパワータイプである為、既に出走辞退して矛先をダートに向けている。
この様に距離が合わない事が分かって権利を放棄する陣営は数多くあり、馬優先――馬に適したレースに出走させるのが第一なのだから。
こうした事で次の馬に権利を譲渡する事は不可能なので、クラシックに出走させたい陣営としては歯痒い思いと言えるだろう。
しかし、権利を取り逃した馬は賞金順位で18番目に入っている事と菊花賞前に行われる抽選で出走権利を得るしかない。
嘗ての名ステイヤーであるスーパークリークの様に抽選を潜り抜けて栄冠を輝かせた馬が居るのだから、悲観する事は殆ど無い。
「4着だったから、菊花賞の出走は危ないかもしれない?」
「……ギリギリかもしれないわ」
現在、アイシクルランスの菊花賞出走賞金順位は12番目位なので余裕に思えるかもしれないが、OP特別1勝のみでは厳しい状況に違いない。
セントライト記念の結果はまだ出ていないので、結果次第では出走可能馬がガラリと変わる可能性も。
なので、アイシクルランスの出走が危うくなる可能性があり得るので、秋子は軽く頭を痛めていた。
「現在の順位なら大丈夫だとは思うがな」
「そうは言いますが、確実に出走権利を得ていた方が気は楽ですよ」
「いざとなれば、来年に備えて回避するのも手だと思うが」
「それもそうですけど、一生のうち一度しか出走出来ないクラシックに出られる可能性があるのに回避は勿体ないですよ」
秋子としては是非とも出走をさせたい様で、それだけアイシクルランスの実力を買っているのが伺える一端。
それだけアイシクルランスが菊花賞向きのスタミナを有しているのだが、出走出来なければ無意味なのだから。
「……出走出来なかった場合も考えておきますか」
「それなら、来年の天皇賞を見据えてアルゼンチン共和国杯かステイヤーズSがどっちかが良いと思うよ」
名雪の案はどちらも長距離に分類されるレースで、特に後者は3600mと日本競馬で1番距離が長い重賞。
天皇賞・春に結びつくかと言えば、そんな訳でも無く寧ろ結果を残すのが難しいレースとも言える。
それだけ独自の距離――3600mと言うのは極限のスタミナを有する馬向けで、今の競馬には合っていないのかもしれない。
それに比べるとアルゼンチン共和国杯は距離2500mのハンデ戦として、アイシクルランスには使いやすいレースだろう。
今の成績ならば斤量が軽い状態で出走出来るので、菊花賞が除外になってしまったら視野に入れても良いくらい。
「そうね……名雪の言う通り、そのどちらかを使う事になるのも考えた方が良いわね」
秋子は名雪の言葉を反復するように口にしてから、しっかりと頷いて2つのプランに関して考え始めた。
さて、今週の競馬は中山競馬場で96年度下半期初のG�機宗愁好廛螢鵐拭璽今咾�開催される。
だが、Kanonファームの生産馬はスプリンターズSに出走する馬はおらず、代わりにピクシーダンスがききょうSに登録。
ききょうSは阪神芝1400mで行われるOP特別で、この時期に開催されるOP特別としてはそれなりにメンバーが集まる。
今年のメンバーは小倉2歳Sで3着に入ったエイシンアーバンが有力視されており、それに続くのがピクシーダンスと言う評価に。
「このメンバーなら逃げ切れる可能性もあるね」
「今回は逃げる必要は無いし、控えたレース振りを見極める可能性が高いと思うわよ」
「そう言えばそうだったね……控えてキチンと抜け出す事が出来るか心配だなぁ」
そんな事を述べながら、秋子と名雪はしっかりとTV画面に向き合い、TVに映っているのはスターターが赤旗を振っている部分が拡大された。
そして、各馬がゲートに入って行きゲートが切られた。
逃げると思われていたピクシーダンスは意図的に3番手辺りへと下げて、押し出されるように別の馬が先頭に立ってしまう。
ピクシーダンスはやや外目の部分で3番手から駆けているが、騎手の動きは喧嘩し合っている状況で、ギチギチと手綱を引っ張っている。
「喧嘩しているな」
「ちょっと不味いですね……とは言え、ここから突っ走らせてもスタミナが持たないでしょうし」
このまま先頭を走る馬を見せ付けて闘争心を煽らせるか、或いはここから一気に先頭に立たせてスタミナ勝負に持ち出すか選択は無い。
そして、騎手が選んだ方法は――前者。
残り距離が半分を切り、相変わらずピクシーダンスは騎手と喧嘩をしたまま3コーナーと4コーナーの中間を駆けている。
直線に入り、今までの鬱憤を晴らす様にピクシーダンスは一気に先頭の馬を追い上げるが、切れ味が鈍く徐々にしか差を詰めて行けない。
ズルズルと下がらないが切れる脚を持たないピクシーダンスには、この展開はミスに近い状況で、後ろからスパッと切れる馬に交わされてしまう。
結果、ピクシーダンスは大きく差を付けられる事は無かったが、5着までが精一杯だった。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。