月の光がボンヤリと海原に幻想的に波に揺れながら道を作っていた。
    夜空にロケット花火が煙きながら、月に向かって弾けた。
    次々と高く上がり、夜空に消えて行くロケット花火。
    ロケット花火が弾ける度、名雪、北川君、そして相沢君がはしゃぐ。
    あたしは防波堤に腰掛け、潮風が時々緩やかに髪をなびくのを押さえ付けながらロケット花火を眺めている。

 

    ―――うぉ、何しやがる相沢。

 

    相沢君が火を着けたロケット花火は、北川君に向かって発射された。
    相沢君は悪戯する子供みたいな笑顔が月明かりに照らされ浮かび上がっていた。

 

    ―――ハッハッハッ、修行が足りないぞ北川。

 

    ぼんやりと二人の行動を眺めているとすっ、と月明かりが影になり、あたしが見上げると名雪が佇んでいた。

 

    「香里、楽しんでいる?」

 

    あたしの表情はいつも通り、冷めておりそれが名雪には楽しんでいる様に見えなかったのだろう。

 

    「ええ、楽しんでいるわよ。
     それにしてもこの時間に名雪が起きている方が驚きよ。」

 

    あたしは左手に付けている腕時計に目を向けると発光塗料がぼんやりと光っており、時計の針は23時45分を指していた。

 

    「わたしだって、こんな時は起きているよ〜」
    「そうかしら?」
    「う〜、酷いこと言ってない?」
    「言葉通りよ」

 

    しばらくも様々な会話が続きあたしは会話を楽しんだ。

 

    「これが最後かもしれないわね。こうやって遊ぶの」

 

    これはあたしの本音だ。
    これからはみんな揃って受験などで忙しくなる。
    大学に入ったら尚更であり、だからそう考えると会える時間も減るだろう。

 

    「えいっ」

 

    あたしの体は浮遊感に包まれ、暗い海の中に突き落とされた。
    あたしは海面から顔を出して突き落とした本人―――名雪を睨んだ。

 

    「何するのよ。名雪!!」
    「香里が馬鹿な事を言うからだよ」

 

    やや声を張り上げ、名雪は怒鳴った。

 

    「私達はそんな簡単にバラバラにはならないよ。
     どこであっても何時も通り馬鹿やってるよ」
    「……そうね」

 

    あたしが浅はかだったわけね。
    考えてみれば簡単には壊れないだろうこのチーム―――美坂チームは。

 

    「名雪、引き上げてくれない?」
    「意味分かった?」
    「ええ、勿論この4人なら簡単にバラバラにはならないわね」

 

    その時あたしは引き上げて貰う感覚が無くなり名雪と共に又、海に落下した。

 

    「相沢君、今何をしたのか教えてくれないかしら?」
    「うむ、名雪を軽く蹴っただけだ。
     ちなみ作戦立案者は北川少尉だ。」

 

    相沢君の笑い声があたしの神経を逆撫でする。

 

    「名雪、後でお仕置きしても良いかしら?」

 

    あたしと共に浮かんでいる名雪は笑顔だが目が笑っていなかった。

 

    「了承」

 

    さて、逃げた方が良いわよ。
    名雪が秋子さんばりに可決をしたことだし、さあ覚悟は良いわねお二人方。
    女性を怒らせたらとんでもない目にあうってその身に刻んであげるわ。

 


 

    やはりこの4人は馬鹿やっているのがあうな。