双子は、人が嫌いでした

僕たちをこんな風にするなんて、と

双子は、人が好きでした

私たちをこんな風にしてくれて、と

けれど

双子は明らかに異常

どうしても、周りから非難される

兄であり弟である彼は言います


──こんなところには、居られない


妹であり姉である彼女は言います


──なら、どこかに行こう……?


彼はそれを否定なんてしない

彼も、それを望んでいるから

「どこに?」

「誰もいないところへ」

「人はどこにでもいるよ?」

「なら作ればいいの」

「どうやって?」

「私に任せて」

「……うん」

今あるこの流れは、すべて彼女が作っているもの

彼があんなことにならないように

今ある流れがあるのは、彼がいるため

彼女をあんな風にしたくなかったから






終演はすぐそこ

双子はようやく役を終えることが出来る

そして、楽園へと足を進める……

☆★☆

僕は、名雪を誘ってデートをしている

今日は祐姫と入れ替わってなんかいない

この役は、僕がすべきだから

僕が、終わらせるべきだから

「どこに行く?」

「祐一とならどこでもいいよ〜」

「ふーん。……なら、とりあえず百花屋にでも寄るか?」

「うんっ」

いつもと違った、本当の笑顔





────香里達ヲ貶メタ奴ガ嗤ウ





「って、結局イチゴサンデー頼むのかっ!」

「だっておいしいんだよ〜」

けど、僕には、そんな笑顔なんていらない

僕が欲しいのは、祐姫だけ

「次、どこがいい?」

「……あ、そういえばお母さんがね、祐一に逢いたいって言ってたよ」

「秋子さんが、ねぇ……。なら、行くか?」

祐姫さえいれば、何もいらない

祐姫となら、ずっと一緒にいたい

だから……祐姫は誰にも渡さない

「おかーさん?」

「……いないみたいだな」

「そうだね……。あ、お茶飲もっ」

「というか。これじゃあデートの意味ないだろ」

「んー、そうなっちゃうねー」

お茶を入れながら、また笑う名雪

それは本当に楽しげで





────私<ボク>ニ嗤ッタ、アノ笑ミト同ジ





「……泊まっていく?」

「いや、今日は帰ろうかなって──」

とんっ

「……あ?」

背中を押された

くらっと、ソファの上に倒れる

「うっ……」

「──帰させないよ」

倒れた僕の上に、名雪が乗りかかってくる

「……な、何する気だ……?」

「ふふっ。祐一も大好きなことだよ」

ボタンが一つずつ、一つずつ外されていく

あまり陽に当たってない白い肌が、見えてくる

「可愛い……」

「ぁっ」

剥き出しにされた胸に舌が這ってくる

その気持ち悪さに、思わず声を上げてしまう

「私の……私の祐一……」

名雪の手は段々と下がってきて、下腹部まで移動する

ベルトがするりと外され、ごんっと金属部が床に当たる音が聞こえた

「もう、こんなにして」

布地の上から擦られた僕自身は、すでに隆起していた

……性行為をしようとしているんだから、ならない方が男性としておかしいけれど

「私とそんなにしたいの、祐一?」

「……………………」

「恥ずかしいの? そんな必要ないのに」

僕の上で服を脱ぐ

そして、ほいっと投げ捨てる

僕を覆っていた残り少ない衣類も、脱がされ捨てられる

「もっと恥ずかしいことするんだよ? 恥ずかしがる必要なんてないよ」

僕の手を取って、自分の胸に当てる

「ん……ねぇ、なんで触ってくれないの?」

「……触って欲しいか?」

実は触りたくないから触ってなかったんだけど

「触ってほしいなぁ……っ!」

返事が返ってきたと同時に、ぎゅっと乳房の根元の方を握って、搾るように引っ張る

名雪は痛さに顔を歪めたと思ったけれど

「んあっ、あぁっ!! ……祐一ってっ、Sなんだ……っ!!」

悶えて、喘ぎを上げる

だから僕は、執拗に胸を弄る

「いいよ……いいよぉぉぉ〜〜〜〜っ!!」

びくんっと名雪の体が反る

下腹部に温かなものを感じる

「……い、イっちゃった。胸だけでイっちゃったよ」

そう呟きながらも、手を僕の腰に当て、動く

ちょうど雫を垂らしているそこに、僕のものがくるように

「私、もう我慢出来ないんだよ」

「……な、ゆき」

「待ちに待ったんだから。……あの雌猫も消せたしねっ!」

「……ぇ?」

僕は、名雪の言葉に耳を疑った

「今頃犯されてるんじゃない? あの娘としたい男の子、たくさんいたからね」

「……名雪……?」

「いい気味だよね。私の祐一を取ろうとするんだから」

名雪は僕の隆起したものを、手で掴む

「香里も、栞ちゃんも、美汐ちゃんも、先輩達も!! 祐一は私のなんだから」

くちゅりと、愛液に塗れたそこに先端が宛がわれる

「けどようやくだよ。……ね、祐一。私を、孕ませて……?」

名雪が腰を下ろす……

「名雪、残念だったな」

前に、突然" 僕 "の声が聞こえ





────目の前に、刃が見えた





「……な、何……?」

左胸に刃を生やした名雪が振り返る

そこには──" 僕 "がいた

「……ゆ、祐一っ!?」

驚きに瞳を見開く名雪をどかす

ソファからようやく出れた僕は、放り出されていた衣類を手に取り、着る

「祐一が……二人も……!?」

「違うね。──おれが昼の祐一で、夜は祐姫」

わたしが昼の祐姫で、夜は祐一」

「な、何、言ってるの……?」

僕たちの言葉に混乱し始めてる名雪

「私の祐一、返してもらうわよ名雪ちゃん」

「そして、死んでくれるかな、名雪」

背から刺さりっぱなしの刃を引き抜いて

「出来れば、もう顔も見たくない」

首を、切り裂いた

☆★☆

家に静寂

ここ最近はなかったことだった

「……なんでしょう?」

リビングで見つけたのは、置き手紙

"お母さんへ


今日、香里のところに泊まってきます

夕飯は作っておいたからね

温めて食べてねっ


                   名雪"

「名雪ったら……」

確かに、鼻を擽るいい匂いがする

秋子はキッチンへ入り、自分の分を装う

テレビを付けて、一人で夕食を済ませる

あと、今日は豚肉だった

いつになく美味しかったと思う

お椀に髪の毛が入ってしまったけど

そんなことを思いながら、食器を洗う

拭いて、所定の位置へ片付ける

ふと見ると、昨日よりも妙に増えた生ゴミ

それを袋の中に入れ、さらにまた袋の中に入れて封をする

臭いが洩れないように、との工夫

そしてゴミ箱を開ける

「……ぇ」

そこには、見慣れない物体

いや、ある意味では見慣れていた

「な、名雪ぃっ!!!」

そう


──ゴミ箱に入っていたのは、こちらを見上げるようにしてある愛娘の頭


「あぁっ、誰がこんなこと……」

そう呟きながら思う

……頭以外はどうしたのだろう?

ふと思考を巡らせた秋子は、それに気付いて

「おぇ……っ!」

吐瀉した

吐瀉物は自然、名雪の頭にかかって覆い尽くす

全部吐いたはずなのに、まだ吐こうとする秋子

何故そこまでする必要があるのか?

それはね?










────愛娘の柔肉を食べてしまったと気付いたからだ