一つ、物語が終わろうとしている

……そういえば

先ほど秋子さんが亡くなったという報告を聞いた

原因は不注意による、交通事故

相手がトラックだったので、即死だったそうだ

どうも、秋子さんは栄養失調のようだったらしく

あの美貌は痩せ細った姿で無くなっていた

自分の愛娘の料理なんて、そう食べれるものじゃないから

僕だって、祐姫の料理を食べたら、すぐにでも後を追ってると思う

だから、秋子さんも何も食べれなくなっていたんだろう

けど、名雪を追えるんだったら、本望でしょ?

「ねぇ、祐姫?」

「なぁに、祐一?」

僕の素っ気無い声に、祐姫の艶やかな声が返ってくる

「僕たち、これからどうする?」

「そうね……。ここにいても、特にすることないし」

「どこか、遠くに行こうか?」

「……子供が欲しいわ」

「……そういえば、なかなか出来ないね?」

「今、祐一のはちゃんと奥を突いてるのにね?」

「……女の子がそんなこと言うんじゃありません」

くすくすと笑う声が、部屋に響く

「……終わったら、二人で逝こうと思ったけど」

「ん?」

「子供が欲しくなったから、やめましょ?」

「祐姫がいいなら、いいよ。僕は」

「ふふっ。いい子ね、祐一は」

少し喘いで、僕のを放す

愛液と交じり合って、ぽたりと落ちる体液

床に点々と、続いていく

祐姫はそんなこと気にせずに、歩いていく

僕は真白い背中に声をかける

「祐姫」

「なぁに?」

「子供って、どうするの?」

「……子供なんだから、それらしくしてもらうわ」

「なるほど」

昔、子は神様の生贄として出されることが多かった

神様に供える我が子だから、"子供"

この場合は、神様が僕たちなのかな?

「まぁ、そんなことはいいじゃない」

「そうだね」

祐姫が持ってきたのは、白銀の刃

「そんな夢彼方のお話は、ね?」

「……このまま行けば、実現したかも」

「そういう子は弾かれるのよ、世間から」

「……冷たいね、祐姫」

「そうね、祐一」

二対であった片方を、手渡される

「本当は欲しいよね?」

「……欲しくないと思う女は女である資格はないと思うわ」

「最近は少子化だよ? 思ってない人が多いんじゃない?」

「ヤればできるんだから、男も甲斐性見せろってね」

「……結局男のせいにするんだ?」

「女から迫るなんて、はしたないのよ」

祐姫が銀色の髪を揺らす

月光に煌くそれは、美しくて高貴

「ふぅ。もう、戯言はいいわね?」

「ん。いいよ」

それでいて、凛としてるその姿は、まるでお姫様

「──ありがと、祐一。私といてくれて」

僕に刃を向ける祐姫

「──ありがとう、祐姫。僕といてくれて」

祐姫に刃を向ける僕

「「願わくは、来世でも幸せであれる様に……」」

そう言って

────僕は、祐姫の胸に、刃を刺した

────祐姫は、僕の胸に、刃を刺した

☆★☆

2月中旬

町外れの工場内にて、遺体が発見される

調べによると、近くの高校3年生

最近、このあたりで高校生の遺体がよく見つかるので、同一犯かと思われた



発見したその遺体は、どう見ても異常だった

全裸で、同一の遺体が抱き締めあって倒れていたから

しっかりと胸──心臓を一突きしてあるのに、も関わらず

調べていく上で分かった事は、この二人が双子ということ

兄の方は記憶障害に、妹の方はは強姦にあったことがあるそうだ

けど、それは5年前ほどのこと

もう直っていると、両親からの話だった

その妹の遺体から、男性の体液を確認された

再び犯されたショックで兄と心中したのかと思ったが、違った

調べてみると、兄の体液であることが判明

その結果のせいで、捜査は難航した






────この双子の番いは、何故こんなところで死に逝ったのかと