「ここが新しく住む場所だぞ、姫」

「わぁ、ここがそうなのですね兄様」

雪の国の、とある一角にあるマンション

そこの最上階の部屋に俺は妹の祐姫と来ていた

「母さんと父さんがもう荷物を運んでくれてるらしい」

「……と、いうことはあとは食料だけですね?」

ドアを開けると、そこには真っ暗な部屋

「食料もいいけど、叔母には挨拶しに行かないと」

「あぁ──秋子さんのことですね」

その暗い部屋を見て回りながら、今後の予定を話す

「従妹の名雪さんもいるけど……大丈夫?」

「……なんとかなるだろ」

一通り見終えて、寝室へ手荷物を置きにいく

「お父さんやお母さんにもばれなかったもんね。大丈夫だよね」

「あぁ。従妹に分かるはずないだろ」

そしてまた玄関の前へ

「さて、行くか」

「そうですね」


「「いってらっしゃい。……いってきます」」





今日、甥たちが来ると姉さんに言われました

「それにしても……」

遅い

昼頃に名雪を駅前に向かわせたのですが……

今の時刻は午後三時

これが示す意味は──

と、玄関の方から声が聞こえた

「お母さ〜ん、祐一いなかったよぉ〜」

名雪の声

ぱたぱたと廊下を走ってくる音

「ねぇねぇ、お母さ〜ん」

そのままの勢いでリビングに入ってきて、私のところに来る

「2時間も待ったのに、祐一ったら来ないんだよ」

どうも甥たち──祐一さんたちは駅前に来てないようだ

何かあったのでしょうか……

その時、電話がかかってきたことを告げるメロディが鳴った

「私、出るねっ」

そう言い、電話の元に行く名雪

そしてすぐに戻ってきて

「お母さん、伯母さんから」

と、言って自分の部屋に戻っていった

「姉さん、から……?」

祐一さんたちが心配でかけてきたのでしょうか?

そう思いながら、電話に出て

──驚きに、息を潜めた

姉さんが言うにはどうやら祐一さんたちは別の場所に住む

そして、もうこの町についているということだった

あの子たちでどう生活していくのかと聞くと

姉さんたちが全てのお金を出す、という返答だった

そしてその電話はそこで切られた

「……なんで?」

(なんで、水瀬家では駄目なの?)

そう思っていると、来客を告げるチャイムが耳に入った

「はい、何方ですか?」

と、ドアを開けてみると


──先程話題になっていた甥たちがいた


「お久しぶりです、秋子さん」

「初めまして、秋子さん」

二人はお辞儀をして、顔を上げ

そこで気づいたことがあった

二人の身長が同じ

双子なら可笑しくはないかもしれないけれど

この二人は二卵性双生児

そして祐一さんは高校2年生で伸び盛りなはずだ

なのに、妹の祐姫さんと同じ身長だなんて──

「……? 秋子さん、どうかされましたか?」

首を不思議そうに傾げる祐姫さんの声を聞いて思考を止めた

「ぁ、いいえ何でもないですよ」

思考を振り払ってから

「それで、どうしたんですか?」

と訊ねた

それには祐一さんが答えた

「一応、挨拶をと思いまして」

微笑を浮かべながら言う、祐一さんに少しの違和感を感じながらも

「上がっていきますか?」

と聞くと

「いえ、荷解きをしなければならないですから」

今度は祐姫さんが答えた

荷解き、ですか

それなら仕方ありませんよね

「「それでは失礼します」」

「気をつけて帰ってくださいね」

二人を見送ってから、戻ろうと後ろを向くと──名雪が立っていた

「ねぇ、お母さん。さっきの祐一だよね?」

「え、ええ、そうよ」

少し名雪の雰囲気に押されながらも答える

「それで、隣の女は?」

「──祐姫さんよ。祐一さんの双子の妹だけど……知らなかったかしら?」

「ふ〜ん。妹かぁ、なんだ。ならいいよ」

と言って、リビングに入っていく名雪

「『女』……名雪が、そんなことを言うなんて」





「ぁっ……祐一……」

俺──私は祐一に抱かれている

「んあっ、あっ、あっ……」

「祐姫……ゆきぃ……っ」

暗闇の中、昼夜も分からぬ部屋のベッドの上で

快楽を貪るように、激しく腰を動かす


──これはあの日からずっと


いつの間にか四つん這いされ、後ろから貫かれていた

舌が背中から首筋に這ってくる

掌が乳房を握り、指先が乳首を捏ねる

そして絶え間無く聞こえる、自身から洩れる水音と喘ぎ声

「はっ、はっ、はっ……ゆきぃ、ゆきぃ……っ!」

「ゆう、いちっ! あっ、うぁっ、ああぁぁぁっ!」

白く染まる視界

動きが止まって、奥に何度も吐き出される

きゅっと自分が祐一を締め付ける感覚

もう逃さない、離さないと

「だぁいすきよ、祐一ぃ……?」

くるっと、繋がったままの状態で振り返って呟く

「僕もだよ、祐姫……」

祐一もそれに答えてくれた

そして、また腰を動かし出す

光は私たちの偽り

闇は私たちの真実


──私たちの夜はまだ終わらない……