目覚まし時計のコール音が響いて、祐一は布団を蹴飛ばす様に跳ね起きる。
     外は春らしく陽気な天気だが、最近は天候が異常すぎて冬と春を往復している感じである。
     その所為で、未だに祐一の布団には毛布が利用されているのが分かる。
     祐一は軽く背伸びをして、ベッドから降りる。
     まだ寝ぼけ眼のままであるが足取りはキチンとしており、欠伸を洩らしながらリビングに向かって行った。

 

    「……はて?」

 

     リビングとダイニングを覗いたが、水瀬家の住民―――秋子と名雪が起きていないのである。
     ダイニングに掛かっている時計を眺めて見るが、8時15分となっており秋子が休日にしては起きるのは遅い時間だろう。

 

    「はて?」

 

     もう一度、祐一は同じ事を呟いてみるが事態は何も変わらなかった。
     仕方ないので、祐一は秋子が起きて来るまで新聞を読むために玄関に移動した。
     外にあるポストまで、小走りで取りに行くが今日は前日より暖かいので祐一は歩き出す。
     広告が厚く詰まった新聞をポストから引っ張り出す様に取り出す。
     外から戻ってきて僅か1分ほどだったが、秋子は未だに寝ているような気配がしていた。

 

 

    「秋子さんが疲れているのか?」

 

     新聞を隅々まで読み終わると、30分程時間が過ぎているが秋子は起きてくる気配は無かった。
     祐一は気になったので、椅子から立ち上がって秋子の部屋に向かって行く。
     コンコンと控えめなノックをすると僅かに秋子の声が聞こえてきたので、祐一は室内に入る。
     秋子の部屋はシンプルにまとまっていたが、所々が女性らしさが窺える室内である。
     秋子は布団に潜り込んだまま、顔だけを出しているが赤っぽい表情であった。

 

    「秋子さん、もしかして風邪をひきました?」

 

     秋子の艶のある前髪を上げて、額に祐一は手をスッと置く。
     秋子の額に手を当てながら、自分の額に手を置いた祐一は暫らくその状態で熱を計る。

 

    「多分ですけど……風邪ですね」

 

     そうですか、と呟いて小さく咳を洩らす。

 

    「じゃあ、今日はゆっくりと休んで下さい。名雪と一緒に掃除などやりますので」
    「お言葉に甘えさせてもらいますね」

 

     秋子は喋り終わるとそのままゆっくりと目を閉じて眠る。
     祐一は一瞬だけ秋子の寝顔を見つめてしまうが、ブンブンと勢い良く頭を振って慌てる様にゆっくりと部屋から出ていった。

 

 

     祐一は名雪を起こして、これからの事を説明しようと部屋の前に来ていた。
     秋子と違い、控えめにノックはせず思いっきり強くすると返事が返ってくる。
     入るぞ、と祐一は一言確認を取ってドアを開ける。

 

    「何の用?」

 

     名雪も秋子と同じ様に布団から顔をだけを出しており、その表情は秋子と同じく赤かった。

 

    「……もしかして、名雪も風邪か?」
    「"も"って事は、お母さんも?」

 

     暫らく沈黙をしていたが祐一は頷いて、名雪は溜息を吐いていた。

 

    「今日は一人で掃除、洗濯と料理とかしておいてね」

 

     名雪は祐一が部屋に来たのは、手伝えと言う為だったのは分かっているので先に釘をさしておく。
     ぐっ、と祐一は呻き声を洩らして、ふらふらと部屋から出て行く。
     名雪はその背中を見て、不安に駆られるがそこまで下手ではない事を期待して眠りについた。

 

    「……取り敢えず、洗濯からしよう」

 

     風呂場の前に設置されている洗濯機の蓋を開けて、中身を確認するがセーター類は既に網に包まれて入っていた。
     勿論、二人が穿いていたと思われる白と青い下着類とかも出てきたが何事も無く祐一は洗濯を開始した。
     ただ、その顔は風邪をひいた二人より赤くなっていたが。
     勿論、干す時も同様に顔が赤くなっていった。

 

 

     全ての事が終わるまでたっぷりと時間を消費しており、未だに朝食を食べていないので朝昼兼用になっていた。
     水瀬家にはインスタント類が殆ど置かれていないので、冷蔵庫を覗くと余ったご飯があったので炒飯を作る。
     秋子と名雪の昼食にはお粥を炊いており、後数分すれば炊けるだろう。

 

    「……今度からは手伝いをもっと増やすか」

 

     自分で作った炒飯を口に移しながら、祐一は独り言を洩らす。
     そして、出来あがったお粥を二人の所に持って行く。
     二人は顔は赤かったが、気持ち良さそうに眠っていたので大した風邪ではないと分かったので祐一は溜息を吐く。
     今日の残りの時間は全て、看病で終わりそうだが祐一は関係なさそうだった。

 

    「おっと、薬を持っていかないと」

 

     市販の薬を仕舞われている場所から取り出して、持って行った。
     因みに二人のお粥の感想は評判が良かったので、祐一は舞いあがった。

 

 

     次の日、二人の体調は戻ったかが祐一は風邪を貰ってしまい、学校では祐一の姿だけは確認出来なかった。

 

 


 

     FF発売前に気温の差が激しかったので、今頃このネタで。