んー、とわたしは唸りながら薄っすらと赤いルージュを唇に引く。
     わたしは鏡を覗き込んで、濃すぎないかジックリとチェックをする。
     ……うん、これなら大丈夫ですね。
     わたしは身体を屈めて鏡に向き合うと、艶の出た唇に軽くなぞって見る。
     ジッと指先を見つめて、僅かに赤くなった指先を妖艶に舐め取る。
     ……わたしは、何をやっているのでしょうか。
     普段ならこの様な事をしないのに、柄にも無く興奮しているのかしら?
     ……ふう、もう一度服装チェックしておきましょう。
     何時もしている三つ編みは解かれており、艶のある髪が僅かになびく。
     服装は落ち付いた配色で白のワイシャツに黒色に近いロングスカートで実にシンプルですね。
     これなら……ちょっと回って見ますか。
     ふわりと舞いあがった黒のロングスカートはちょっと恥ずかしいですね。
     うん、大丈夫そうですね。
     ふふっ、後は待ち合わせだけですね。

 

 

     はぁ……しつこいですね。
     目の前にいる男の人達はわたしに声を掛けてきますけど興味は引きません。
     とても、敵わないと思う方々ばかりが安っぽい言葉を掛けて来ます。
     今日はせっかくのデートだと言うのに……気分が滅入ります。
     こんな事なら家から一緒に来れば良かったですね。
     むう……どうしましょう?
     こういう時は無視した方良いんですけど……あら? 人込みがモーゼの十戒の様に割れて行きますね。
     遅いですよ? 祐一さん。
     祐一さんが来たら回りにいた男の人達があっさりと立ち去って行きますね。
     今の人達はあっさりと引いてくれたので、ほっとしました。
     せっかくのデートに喧嘩騒動とかに、巻き込まれたくありませんしね。
     さあ、今日は精一杯遊びましょうね? 祐一さん。
     祐一さんから誘ってくれたのに楽しまないと損するじゃないですか。
     わたしは祐一さんの大きくて暖かい手を引っ張りながら走りだしました。
     ロングスカートだからちょっと走りにくいですね。
     それに久しぶりにブーツを履いたので走るのはキツイですね。
     はぁ……仕方ないのでゆっくりと歩いて行きましょう。
     わたしが歩き始めると祐一さんは歩調を合わせてくれましたので、腕をぎゅっと組みました。
     これなら他人から見たら完璧にデートしている様に見えるでしょうね。
     ……あら? 祐一さんは赤くなりながら俯いてますね。
     ふふっ、何時もと違う表情が見られるとは思わなかったですね。
     心の奥にこの表情は宝として仕舞っておきましょう。

 

 

     今日は楽しみましたし、最後の仕上げと行きますか。
     祐一さんにお礼代わりとして、唇にキスを差し上げましたけど喜んでくれたでしょうか?
     ふふっ、お礼はこれで最後じゃないんですよ。
     わたしはぐいぐいと祐一さんを引っ張り、ある場所に連れて行きます。
     デートの最後としてはこれだけは外せませんからね。
     あらあら、祐一さんの表情は困惑そうになっていますね。
     今日のお礼におねーさんがリードしてあげますよ。
     さぁ、祐一さん最後は一緒に快楽に溺れましょうね。

 

 


 

     秋子さん誕生日小説ですけど、ちょっと方向がずれたっぽいかもです。
     最後の部分はまぁ、分かってくださいね。