目元がぼやけるわね。
     天井が迫って来そうな感覚がしており、回りがグラグラと揺れている。
     カーテンを隙間からは朝日が伸びているけど、カーテンを開ける余裕が無い。
     幸い、今日が休日で助かった。
     今日はこのまま、大人しく寝ていよう。

 

    「お姉ちゃん、朝ですよ」

 

     こ、こんな時に限って早起きしてくるなんて……恨みがあるのかしら?
     ちょ、ちょっと、身体揺らさないでよ。

 

    「ほら、起きてくださいよ」

 

     お願いだから、寝かせて置いて欲しいわよ。
     何度も揺さぶれているのも癪なので、弱っている身体を無理矢理起こして栞を睨む。

 

    「お姉ちゃん、おはよう……風邪引いたんですか?」

 

     そうよ、見れば分かるでしょう。
     あたしは自分の顔が風邪によって紅潮しているのが、感覚で分かるが見た目は分からなかったのかしら?

 

    「うん、完璧に風邪ですね」

 

     おでこにヒンヤリとした物が置かれるが、今のあたしには何が置かれたか分からなかった。
     ……気持ち良いわね。
     その冷たい物が外されると同時にあたしは身体を支えきれなくなる。
     意識がボンヤリとしており、自分がどうなったか分からない。
     あたしの傍では、栞が何か騒いでいるけど……五月蝿いわよ。
     お願いだから静かにして欲しいわ。
     そう考えているうちにあたしはゆっくりと瞼を閉じて行った。

 

 

      まるで浮遊している感覚があたしの身体全体をを支配する。
     回りは何も無く、闇に包まれている感じが心地良かった。
     眼を開けて部屋を見回すと室内は殆ど暗闇に包まれており、かなりの時間眠っていたのが分かり苦笑いを洩らしてしまう。
     名雪みたいね、とさっきより幾分余裕がある考えが出てくる。
     あたしは汗によってべちょべちょになった着心地が悪いパジャマを脱ぎ捨てて、身体を拭こうと考える。
     何時も動かしている自分の身体ではない様な感覚が残っているが、身嗜みの為に無理矢理動かす。
     頭を動かすと、ズルリと濡れていたと思われるタオルがベッドの横にすべり落ちる。
     落ちたタオルを拾おうとして視線をベッドの横に動かして見ると、栞がベッドの横に頭を乗せて眠っていた。
     あたしは栞の頭を感謝の意を表わしながら軽く撫でる。
     あたしのウェーブヘアと違い、栞の髪はストレートヘアなので指に絡まる事無く指の間を流れて行く。
     羨ましげに何度も撫でるが、看病してくれた感謝の方が高いのは確かだ。

 

    「……ん」

 

     ちょっと強く撫で過ぎたかしら?
     ぼんやりとした表情で眼を覚ました栞は軽く欠伸を噛み殺して、あたしに挨拶をする。
     こんばんはと言った方が正しい時間だが、栞はおはようございますと言ってきたのであたしも同じ挨拶を返した。

 

    「寝てないと駄目ですよ?」

 

     あたしが起きた理由を話すと、栞は多分床に置いてあった洗面器を持って口端を歪めたような表情であった。
     あたしは理由が分かったので断ろうとする。

 

    「病人は出来るだけ人の言う事聞かないと直りませんよ?」

 

     ……はぁ、分かったわよ。
     何時の間にかあたしが手玉に取られており、ちょっと悔しさが込み上げて来たが嬉しくもある。
     でも、たまにはこう言う日があって立場逆でも良いかなと思った。

 

 

      ……はぁ、やっぱり移ったわね。
     あたしは今は自分の部屋ではなく、栞の部屋にいる。
     あたしの部屋と違い栞の部屋は女の子らしく、様々な装飾がされていた。
     久しぶりに栞の部屋に入ったのだが、あたしの部屋がいかにシンプル過ぎるのかが分かるぐらい装飾が多かった。

 

    「お姉ちゃん、看病してください」

 

     幾分、余裕そうな表情で言ってくるので軽症だろうと思う。
     あたしはもう既に学校に行く準備は出来ているので、後ちょっとしたら出て行く時間であった。

 

    「むう、可愛い妹が風邪引いているに看病してくれないんですか?」

 

     自分で可愛いって言わない方が良いわよ?
     あたしに言わせれば、その言い方は安っぽく感じるから。
     はぁ……このままでは遅刻してしまうわね。
     あたしは栞に対して、最大の効果がある言葉を放った。

 

    「お土産にアイス買って来るから、大人しくしていなさい」

 

     さて、アイスの一言で大人しくなった事だし学校に行きますか。
     空は透き通る程青く、雲が1つも出ていない秋の空であった。

 

 


 

     帰京書いていたので出番が一度も無かった二人にスポットをあてました。
     立場を逆にしたのが料理ネタ以外なかったので、ちっと書いてみました。