外は春の陽気を見せており、陽射しが気持ち良い日である。
     秋子は掃除をしており、どうやら自分の部屋で終わりのようだ。
     部屋に舞散る僅かな埃をはたいて、掃除機を隅々まで細かく動かす。

 

    「さて、これで終わりですね」

 

     部屋の中をぐるりと見まわして、チェックするが殆ど問題が無いほど綺麗になっていた。
     掃除機を片付けながら、秋子は1点の場所を見つめてしまう。
     そこは本棚であり、様々な本がぎっしりと詰まっていたので秋子は整理をするか頬に手を当てて考える。
     多数の料理の本が詰まっており、中には背表紙がボロボロな本などが出てきて良く使っているのが分かる。
     一度、全ての本を取り出して横に積み上げていく。
     その本は縦横左右に数え切れない程積まれており、重量も秋子自身の体重を超えていると思うほどの数。

 

    「はぁ……捨てるのも勿体無いですね」

 

     本を一冊取ってパラパラとページを捲りながら、秋子は小さく溜息を吐く。
     取り敢えず、秋子は本を捨てるのと残しておく物に分割するべく動き出す。
     いらなくなった本は紐でキツク縛られて、紐を切らない限り二度と見られないだろう。
     そして、本は様々な物が置かれている物置の中に仕舞われる。
     本棚はスッキリとなったのが嬉しいのか、秋子は楽しそうに考えながら本を戻していく。
     そして、残った最後の一冊となったのはピンク色の背表紙をしたアルバムであった。
     秋子は懐かしさから抱える様に持って、リビングで鑑賞するようだ。

 

 

     要れたてのコーヒーを飲みながら、秋子はゆっくりとアルバムの1ページ目を捲る。
     少し色褪せた写真が1ページに6枚ほど張られているが、どれも秋子には懐かしい物。
     殆どの写真は名雪が写っているのが多く、風景写真などは1枚も無い。
     そして、数ページ捲った所で秋子と一緒に写っている男性の写真も見つかる。
     その写真を見て、秋子は懐かしがりながらクスッと笑う。

 

    「この後は確か……ファーストキスだったかしら?」

 

     アルバムから写真を取り出して、白地の方に引っくり返すと文字が書かれていた。
     "ものみの丘にて"と小さく、女性らしさが出ていている文字が書かれている。
     確認をすると秋子は頬杖付きながら、右手の人差し指と中指に挟んでクルクルと回すように玩ぶ。
     想い出を仕舞い込むためにアルバムの元の位置その写真を貼り戻す。

 

    「そう言えば、最近は殆ど写真は撮っていませんね」

 

     最後に撮ったのは、と呟きながら秋子はアルバムの最後のページを開く。
     その写真は名雪の高校入学式の時であり、まだ制服を着ていると言うより制服に着られているといった方が近い。

 

    「後で、家族三人で一緒に撮りますか」

 

     そうと決まれば、と秋子は呟いて二人から承認を得ずに準備をために行動を開始。
     リビングにはページが開きかけのアルバムと、一口しか手を付けていないコーヒーが白い湯気をふわふわと立ち上らせていた。

 

 

     祐一と名雪が帰って来たのは正午を僅かに過ぎた時。
     二人は両手一杯に買い物袋と鞄をぶら下げながら、クタクタになって帰って来た。

 

    「二人ともご苦労様」
    「流石にこれだけの量を運ぶは疲れたよ」
    「それにしても、冷蔵庫が空っぽに近いのも珍しいですね」

 

     冷蔵庫に買った物を詰めながら、祐一は珍しい物が見れましたと言いたげに呟く。
     名雪は材料を祐一に手渡して、祐一はテキパキと冷蔵庫に材料を詰めていく。
     バケツリレーを要領として渡しているので、数分も経たないで終了する。

 

    「お疲れ様。後はわたしが昼食を作るので休んでて良いですよ」
    「じゃあ、言葉に甘えるよ」

 

     名雪は秋子に言われたので手伝わずにリビングに向かって行き、祐一も同様にリビングで待つようだ。
     暫らくすると、ダイニングテーブルには出来立てのパスタが皿に盛られて出される。湯気が立ち、出来たてなのが分かる。

 

    「いただきます」

 

     祐一はがつく様に食べ、名雪と秋子は上品そうにフォークにパスタを巻き付けて食べている。
     暫らく、三人は食事の方に集中をしつつ、時折様々な会話で盛りあがる。

 

    「後で、三人で写真撮りませんか?」

 

     秋子は唐突に説明を省いて、簡潔に言うので祐一と名雪は首を傾げる。
     秋子が事情を説明すると二人は何も言わずにOKサインを出す。

 

    「じゃあ、早く撮りましょうか」
    「そうですね」
    「うー、待ってよ。わたしまだ食べ終わってないよ」

 

     名雪は眉をひそめながら言うが、その表情ではあまり怒っている様には見えなかった。

 

 

     場所はダイニングから移って、庭に移動した三人。
     気持ち良い風が木々の葉を揺らし、陽気な日射しが三人を照らす。
     祐一は最近のデジタルカメラからやや質が落ちる、旧型のデジカメの液晶を覗き込みながら質問をする。

 

    「どうやって撮りますか?」
    「祐一さんが中心で、わたしと名雪は左右で」

 

     祐一は三脚にデジカメをセットして、タイマー状態にして二人の中心に移動する。そして、シャッターが押される。
     その写真は秋子が祐一に抱き付いて頬に軽くキスをしており、名雪はレンズから殆ど視線を外していた。
     祐一は驚愕の表情で秋子を見つめているこの写真は、アルバムの1ぺージに何事もなかった様に加えられた。

 

 


 

     久しぶりに秋子さんがメインの話でした。