ふんふん、とあたしは鼻歌を歌いながらタンス中から服を取り出す。
     今、着ている室内着は脱ぎ捨てる様にベッドの上に放り投げる。
     念の為に、この前に買っておいた真新しい黒い下着に履き替えておこう。
     年下の彼が珍しく、勉強教えてくれと頼んで来たのであたしは即効で了承をしている。
     これは俗に言う、家庭教師なのかな?
     と、言う訳で外見から入るためにあたしは着替える。
     壁に掛かっている時計を見ると約束の時間まで、あと30分程であった。
     ぱっぱ、とスーツに着替えますか。

 

 

     あたしは姿見で全身を満遍なく眺めるが、何か物足りないわね。
     頭からつま先まで、ジックリと眺めて何かが足りないのに気がついた。
     ポンと手を叩いて、あたしはタンスの中から黒のストッキングを取り出す。
     あたしはベッドに座って、編目の細かいストッキングに脚を通していく。
     もう一度、姿見で満遍なく眺めるがこれでばっちりね。
     これなら、家庭教師やOLのおねーさんに見えるかな?
     最後にロングウェーブの金髪をゴムで止めて、度が入っていないノンフレームの眼鏡を掛けて完成と。
     うん、自分で言うのも何だけど、これなら彼も喜ぶよね。
     さて、出発ー。

 

 

     ピンポーン、とチャイムを押して彼が玄関まで来るの待つ。

 

    「姉さん、いら……しゃい?」
    「何、固まっているのよ」

 

     むぅ、あたしの姿を見て固まるなんて良い度胸ね。
     あたしは彼の柔らかい頬を引っ張って、硬直状態をむりやり解除させる。

 

    「いひゅい、はにゃしてふれ」

 

     名残惜しいけど、言われたから仕方なく放しておく。
     頬を引っ張った感触を残した指を適当に弄って、謝る。
     彼は小さく溜息を吐きながら、頬を擦る。

 

    「まったく、人の服装を見て固まるのは失礼じゃない?」

 

     あたしは勝手を知っている玄関に上がり込んで、パンプスを脱ぎ揃える。

 

    「普通の服装で来ると思ってたから」
    「じゃあ、この服装で着たのは喜んで貰えたかしら?」

 

     あたしはスーツの襟の軽く摘んで、胸を見せる様に上目使いする。
     すると、彼はやや赤くなって頷いたのであたしは喜んで彼の身体をギュッと抱きしめる。
     うーん、これはいつも思うけど役得ね。
     彼の髪は柔らかく、シャンプーの匂いが僅かにあたしの鼻腔をくすぐってくれる。

 

    「あー、もう抱きしめるのは後でも良いから先に勉強教えてくれ」
    「むぅ、しょうがないわね。譲歩してあげる」

 

     あたしは彼を放すと、2階にある彼の部屋に向かって行った。

 

 

     そして、勉強は何の問題も無く終わった。
     普通に分からない所だけを教えていく感じで進めて行った。
     勉強を教えていたのは正味2時間半程だろうか。
     終わった頃には外はオレンジ色の夕焼けに染まっていた。
     あたしは借り物の椅子に座ったまま、軽く背伸びをして彼の身体に抱き付く。

 

    「さて、今日の報酬はこれで良いわ」
    「姉さん、いきなり抱きしめないでくれ」

 

     やっぱり、家庭教師を即効了承して良かった。
     はぁ、これが1番の至福の時ね。
     何時もだったら嫌がるのに、今日はやけに大人しいわね。
     あたしは抱き付きながら、彼の髪を撫でてるが何時もの様に嫌がらないのが不思議だった。

 

    「今日は嫌がらないのね」
    「そういう時もある」

 

     ん、ふぅ。
     彼は身体の向きを変えて、あたしにキスをしてきた。
     あたしは別に驚く事も無く普通にキスを受け入れて、カーペットがひいてある床にゆっくりと倒れ込む。
     そして、あたしはお姫様抱っこされてマットレスが硬いベッドの上に落とされる。
     ん、今日も積極的にしますか。

 

 

     あたしはシャワーを借りて、運動によって流した汗を綺麗に洗う。
     肌はお湯を弾いており、あたしの肌はまだ瑞々しいのが分かる。
     あたしはシャワーを浴びるのを終わらせて、借りているお風呂場から退出する。
     タオル掛けには蒼いバスタオルが掛かっており、このタオルを使用してと言う事だろう。
     あたしはそのタオルで身体を優しく拭いて、スーツに着替える。

 

    「さて、そろそろ帰るわね」
    「ああ、じゃあまた明日に頼む」

 

     勿論、即効で了承するしかないじゃないの。
     玄関には彼の母親も来ており、あたしにお礼を言ってくれた。

 

    「助かりましたよ。また次回もお願いして良いですか?」
    「ええ、勿論良いですよ」

 

     彼の母親は賢母の様に表情を和らげており、優しさが良く分かる。
     彼を本当に産んだのかと思えるほど若若しく、肌の張りもあたしより瑞々しいだろう。
     伸ばしている艶のある髪は三つ編みにされており、彼がいかに母親の血を濃く引いているのが分かってしまう。
     彼の母親はあたしに耳打ちをした後にスッ、とリビングに向かって行った。

 

    「じゃあ、また明日ね。おやすみ」

 

     最後にあたしは彼に不意打ちされたさっきのお返しとして、お休みのキスをしてから意気揚揚として家に帰る。
     彼の表情はいきなりのキスに驚いて硬直してしまっていたのを、あたしは心に刻んでおいた。

 

 


 

     1年振りのおねーさんSSです。
     ちょいエロかもしれないけど、シーンは無いから甘ラブですよ。