「……はふぅ」
あたしは悩ましい溜息を吐き出し、あたしの肩に頭をこてんと乗せて
眠っている隣の年下の彼の寝顔を見るため、ドクドクとあたしの心臓がビートを叩き出す。
目の前の液晶テレビは映画が流れているが、そんなのは如何でもいい。
今、あたしがこれから行うミッションの方が大事な任務だ。
下手すると暫くは出会えないほどの大物だ。
他のミッションはミスしてもでもこれだけは成し遂げたい。
無邪気な寝顔はいつも見ているが今日は何時もとは違う。
あたしの肩に預けて眠っている事がレアなものだ。
テレビはCMに変わり数秒置きに内容がめぐるましく変わる。
あたしは顔を少しずつ横に向けていき、彼を起こさない様にゆったりと髪を撫でる。
さらりと手に絡む事無く、髪はあたしの指の間をすり抜け、柔らかい髪の感触があたしの手に残る。
普段は撫でさせてくれないのでこういう時にしか撫でる時が無いから今日だけは神を信じようかしら。
「……羨ましいわね」
あたしは自分の髪を軽く摘み、見比べるがあたしの髪は何度見てもうねっており溜息も付きたくなる。
彼のさらさらな髪が羨ましく、何度も同じ事を口にしたんだろう。
それぐらいあたしの髪は天然ウェーブが強いのだ。
「……ん」
おっと、触り過ぎたかしら?
あたしは名残惜しく撫でるのを止めると彼はタイミング良く目を覚ました。
「おはよう。髪撫でさせて貰ったから」
「なっ!?……勝手に撫でないでくれ」
彼はぷいっとそっぽ向き、あたしは悪戯がしたくなり頬が弛み、にやりと笑いながら後ろからぎゅっと抱きしめる。
彼はもがいているがあたしは気にせず、また髪を撫で始める。
「姉さん!!これ以上撫でるなぁ!!」
彼はあたしの事を姉さんと呼ぶが別に姉弟じゃないし義姉弟でもないし従姉弟でもない。
つまり、お隣のおねーさんと5歳年下のおとーとの関係で幼馴染だったが今は結ばれており、俗にいうカップルである。
これ以上怒らすのは気が引けるのであたしは撫でるのをやめ軽口を叩く。
「んもう、ケチね。こんな美人のおねーさんに撫でて貰えるのに」
何が不満なのかしら?
あたしは自分の容姿を軽く考える。
髪は染めていないで元から金髪でロングウェーブ。
肌は白く、血色もかなり良いはず。
出ている所は出ていて、引っ込んでいる所はきちんと引っ込んでいる。
足もすらりと長い。
うん、何も問題は無い。
「子供扱いするからだ」
……ぷっ、あはははは。
あたしは又彼が怒るのを承知で髪がくしゃくしゃになる程強く撫でた。
「っ……姉さん!!笑いながら撫でるなぁ!!」
そっぽ向きながら答える様じゃ子供扱いもしたくなるわよ。
「ごめん、ごめん、でもそういう行為が子供っぽいのよ」
うっ、と彼は言葉を詰まらせるとそのまま黙り込んだ。
でも……そこが良いんだけどね、と聞こえないように呟いておいた。
「何か言ったか?姉さん」
「べ、別に何も言ってないわよ」
「……うそだな。姉さんは嘘つく時、髪を弄くるし」
あたしはそう言われてから気づき、髪を弄くる手を止め苦笑いを浮かべてしまった。
「さて、嘘をついたのが分かった事だし」
あ、あの〜何故、抱っこされているのですかあたしは?
「さあ、何故でしょうね?」
そういう時だけ大人らしくなるなんて何度見てもくるわね。
って、なんであたしの部屋に行くのよ?
「まあ、その気にするな」
パタンとドアが閉まった途端、声が響いた。
そして、TVは既に終わっており後はCMが繰り返し流れていた。
あー、なんて言うかごめんなさい?
このキャラ達には名前がありませんのでご想像してください。