オマケその1



 別に私たちには聖夜など関係はない。
 まものがいるから戦う。
 私がいるから戦う。
 それだけ。
 故に。
 今宵も剣をふる。

 もやもやと揺らぐ存在が今夜も私の前に現れる。
 それに合わせ、私も西洋の剣を構える。
 下段から。

「……くる」

 私の声が合図。
 まものの姿がブレる。
 右!
 私の剣は正確にまものの攻撃を防ぐ。
 相手も剣か何かを持っているのだろうか。
 金属音が夜の学校に鳴り響く。
 左!
 これも防ぐ。
 目まぐるしく動くまものの動きに私はしっかりとついていく。
 防いでばかりじゃ勝利はない。
 上!
 今度は防ぐために動くのではない。
 右へ動く。
 そのまま剣を上段へと振り上げる!

「……っ!!」

 まものが驚いている。
 そのまま、お前を斬り捨ててやる!

 そして突然の閃光に私は攻撃を止め距離をとる。
 何かが、きた。

「ゆーいち?」

 初めて聞く、まものの声。
 目の前に現れたのは、赤いサンタクロースの姿をした祐一だった。





「祐一」
「ん……? おぉ、よう、舞」

 廊下を歩いている祐一を見つけたので、後ろから声をかけた。
 笑顔で祐一は私に挨拶してくれた。

「……よ」

 ちょっと照れくさくなったので、軽く手をあげる。

「どうした?」
「あ、あの……」
「ん?」

 私とあの子を救ってくれたのは祐一。
 だから。

「あ、ありがと――――」
「ゆーいちっ!!」
「うぉあ!?」

 そんな私の言葉を遮って舞々が祐一に抱きついた。……ずるい。

「お前、まいまいか!?」
「うん、そーだよっ!」

 驚く祐一。笑顔で祐一に抱きつく舞々。
 祐一に抱く着く……かなり嫌いじゃない。

「……お前ら、ちゃんと仲直りしたんだな?」
「うんっ。ゆーいちのおかげだよ!」
「いや……俺は背中を押しただけさ。それに、何もできなかった」
「ううん……そんなことないよ! ね、舞もそー思うよね?」

 舞々だけ抱きついてずるい……。ずるい。ずるいずるい。

「ま、舞?」
「舞、どうした……? 何をブツブツ言ってるんだ?」

 祐一が私の顔を覗き込む。
 つい、言ってしまった。

「舞々だけ祐一に抱きついてずるい」
「は?」
「え?」

 祐一と舞々の目が点。
 ……もしかしなくても私はとてつもなく恥ずかしいことを言ったのではないか。
 急激に顔が熱くなる。耳の先っぽまでも熱い。

「そうかそうか。舞も俺に抱きつきたいのか」
「舞がそんな素直に言うなんてねぇ」

 ニヤニヤ笑う二人。
 ビシビシっ。
 ダブルチョップ。

「ほら、舞、おいで」
「舞も抱きついちゃえー!」

 また、私をからかって……!
 さっきより痛くチョップをしてやろうと思い腕を振り上げようとしたけど。

「……ん」

 祐一があまりにも優しい笑顔をしているから。
 ぽふっと祐一の胸に顔を埋める。

「よしよし」

 祐一の腕に撫でられる。
 私の顔は、さっきよりも真っ赤になってることだろう。
 だって、祐一の胸の中で頭を撫でられているのだから。

「祐一、何してるんですか?」

 第三者の女性の声で祐一の動きが固まる。
 撫でる手の動きが止まった。
 祐一に撫でられるの、かなり嫌じゃない。

「な、なんでしょうか鈴音さん」
「私と帰るんでしょう?」
「は、はい」
「何をしていたんですか?」
「い、いや……友情の確認を」
「なにを」

 見たことない女の子、後輩の子は一息吸って。

「してるんですか!」

 言葉と共に解き放った。

「す、すまん、舞、まいまい! また今度な!」

 そう言って祐一は走り去る。
 あぁ……ぽんぽこたぬきさん。

「待ちなさい、祐一!」
「待ったら何をするつもりなんだ鈴音!」
「根性を叩きなおしてあげますよ!」

 12月26日の、何気ない出来事。




 おわり。


 2006/12/19 つきみ